第3話

このまま進んだらヤバいから馬車を止めて貰おう。


「グエルさん! 馬を止めて下さいっ!!」


「どうして、何かあったのか?」


「モンスターかどうかは分からないですけど、この先に敵がいます!」


「馬車を止めて辺りを警戒するんだっ!!」


それを聞いたグエルさんは俺を見つめながら目を見開た後に周りにいる部下に指示を出すと、進むのを止めて全員武器を取り出すが一人だけ反応の違う人がいた。


「嘘を吐くな! 隊長、止めなくて良いこのまま進みましょうっ!! 」


えっ!? 確かエイドさんだったけ、何を言ってるですか?


「エイド何を言ってるのよ!彼女はウソを吐いている様に見えないわ!」


「俺もエイミーに同意権だ。それに彼女が言ってる方向から微かに人の匂いがするから俺も止めるかどうか迷っていたところだったんだが、彼女の言葉で止めることにした。安全に進む方が良いだろう」


それを聞いたエイドさんは眉間にシワを作って何故か俺を睨んできた後にグエルさんに顔を向ける。


「ただ冒険者達が魔物の狩りをしているだけかも知れませんよ」


「う〜〜〜ん・・・・・・あり得るが、冒険者は厄介な輩が多いからな」


なんだか長話になりそうと判断した俺は馬を降りてから双眼鏡を取り出す。そしてレーダーで示されている方向に体をむけて双眼鏡を覗き、正確な位置と敵の数を確認をする。


「ん? ・・・・・・それにしてはおかしいですねぇ。 向こうには五人いますが全員木の後ろや草むらに隠れながらこっちを見ています。まるで私達を狙っている見たいに・・・・・・ね」


横に顔を向けて口元を動かしているってことは話し合ってることだよな。じゃあこの五人は仲間だな・・・・・・ん? 一人後ろを向いた。もしかして、アイツらの後ろにも仲間がいるのか?


そんな風に約200メートル先の敵の様子を確認をしていると俺の後ろに誰かが近づいて来た。


「エルライナさん、それは本当かいっ!!」


あ、俺のところに来たのは残念イケメンのキースさんでしたか。


「はい、多分今見えている人達は偵察だと思います。キースさん確かこの先は緩やかな右カーブでしたよね」


あらかじめマップの方で道のりは確認しているから、どういう道を通るのか把握はしている。


「あぁ、そうだ。それがどうした?」


俺はグエルさん達に説明を続ける。


「左側に森林が道を沿うように生えていて右側が隠れる所の無い草原地帯、どう見ても奇襲ポイントに最適の場所ですね」


「あぁ そうだな」


「多分相手が考えてる作戦は、私達がカーブの中間に来たら前に出て行くてを塞いだ後に、交戦してこの部隊を道を塞いだ敵と戦う側と馬車を守る側に分断させる」


流石に貴族であるバルデック公爵様が乗ってる馬車を守る人のいないフリーの状態にはしないだろう。


「そ、その後は?」


「分断が出来たら、馬車の側面から矢を浴びせて守りの方を混乱させてる間に他の仲間が馬車の後ろ側から忍び寄って襲う戦法を取ると思います。まぁ、あくまで私の憶測ですけど」


効率が一番良い方法は今言ったやり方だ。まぁ、相手が無知な連中だったら真横に来たところで一斉に襲ってくるだろう。数が多けりゃこっちが勝つに決まってんだろっ!! みたいな感じで。


「「「「「「・・・・・・」」」」」」


あれ? みんな固まっている。しかもいつの間にか公爵様が馬車から降りて来てる。危ないから馬車に戻った方が良いんじゃない?


「あの、皆さん大丈夫ですか?」


「「「「「「ハッ!?」」」」」」


気が着いたグエルさんが仲間に指示を出し始める。


「キース 魔眼を使って、今見えているヤツらが敵かどうか確かめてくれ。リズリナは召喚獣を呼んで偵察をしてくれ。彼女の言う通りなら他にも敵がいるかも知れない」


「「ハ、ハイッ!!」」


キースさんとリズリナさんはグエルさんの指示とうり動き始めた。




〜〜〜 グエル side 〜〜〜


「ねぇ、グエル・・・・・・ちょっといい?」


エイミーは困惑した様子でグエルに尋ねる。


「どうしたエイミー、今は隊長だ」


「ごめんなさい隊長・・・・・・隊長はあの子をどう思います?」


「どうって・・・・・・」


2人は道の右側の草原に入って何かをしているエルライナを見つめる。


「正直言ってなんて言えば良いか分からない。彼女は何者なんだ?」


「他の大陸から来た暗殺者?」


「それなら俺たちに話し掛けないだろう? それにこんな近くに大物がいるのに殺そうとしない暗殺者っていないだろう?」


エイミーは目をつぶりしばらく考えたようだが、どこか納得出来ていない顔をしている。


「それもそうね。それに彼女も気にしていた事だけど、今日のエイドは様子がおかしいわ」


「あぁ、それは俺も感じていた。エイドと後で話し合おうと思っている」


「私からもお願いするわ」


2人が話しているとリズリナとキースが偵察が終わったのかこっちに向かって来た。


「隊長! 私の召喚獣の リット が戻って来ました!」


「僕の方も丁度終わりましたよ。すごい事が分かりました」


「よし、エルライナを呼んでくれ、来たら作戦会議を始める」


「分かったわ。エルライナちゃん、こっち来てっ! 作戦会議するよぉーーーっ!!」


エイミーがエルライナの居る方向に大声を出してエルライナを呼ぶが、向こうにいる輩に聞こえてないよな?


「はい!分かりましたっ!!」


草むらで何かをしていたエルライナは返事をした後に走って部隊に戻って来が、お前ら声を出し過ぎだ! 相手に聞かれるぞっ!!




〜〜〜 エルライナ side 〜〜〜



「先ずは僕のから、僕達を木の陰から見ていた人達は装備からして全員冒険者の可能性が高いです。僕の鑑定スキルを使って見たところでは、五人とも犯罪歴がありました」


鑑定スキルってそこまで見れとは便利なスキルだなぁ。


「私の方はキースさんが見た五人を含め、三十人の人達が十人ずつで別れてその場で伏せているか物陰に隠れて武器を構えたまま待機している者、 いずれにしろ動かないままでいます。それと、何故か彼らは馬を持って居ないみたいです」


報告を聞いたグエルさんは、う〜ん・・・・・・ と何かを考えた後にリズリナさんに言い出す。


「馬を持って無いのは恐らく厩舎で馬を借りれなかったんだろ? 冒険科と違って冒険者には良くある事だ。で、相手の配置はわかるか?」


「はい、敵の配置はここからカーブの始まりに今顔を出してる五人の後ろに五人隠れていて、カーブの中間に十人身を潜めて待機しています。そして中間より先に十人が道の側面で待機しています。我々がこのまま行くとエルライナさんが言った通りの戦法に嵌ってしまうのが見て取れます」


「隊長、右側の草原から行きましょう。そうすれば彼奴らと交戦しなくて済みます」


「草原は無理です。さっき草原に入ってみて分かったのが、地面が緩い場所が多いかったです。このまま馬車が草原に入ったら地面に埋まって行き動かなくなる可能性があります」


エイドさんが案を出すが俺は反対を理由つきで言わしてもらう。そう、さっき草原に入ったのもそれが出来るかをどうかを確認しに行っていたのだ。


そう言った瞬間、またエイドさんが俺を睨んできた。


なんでこの人はいちいち俺を睨んでくるんだ? もしかして、小娘が出しゃばるんじゃないっ!! って言いたいのかな?


「王都に戻りましょう。流石に三十人相手にするのはキツいわ」


エイミーさんのその言葉を聞いたグエルさんが しかし・・・・・・ と言いながら腕を組んで考えている。


ん? ・・・・・・なんだ? レーダーの動きが、なぁっ!!?


「敵がこっちに走って来ますっ!!!」


「なにっ!?」


「隊長本当ですっ!! 冒険者達が武器を持ってこっちに走って来てますっ!!」


キースさんが慌てた様子で森林側に指を差しながらグエルに報告をする。


「全員戦闘体制を取れ! 冒険者達を迎え撃つ!!」


護衛部隊の全員が武器を持ち冒険者を迎え撃とうとするので、俺も協力しないとな。


「エルライナさん、危ないから貴女は後ろに下がってっ!!」


エイミーさんがそう言うが、俺は下がる気は無い。


「退いて下さい危ないですよ」


「危ないのは貴女よ! ナイフしか持って無いんでしょう?」


・・・・・・口で説明するより見せた方が良早そうだな。


ACE32のセレクターをセーフティーからセミに変えて、ニーリングの姿勢を取り約170メートル先の敵の一人に狙いを定める。


「耳を塞いで下さい。大きい音が出ますよ」


「は、はぁ?」


一応注意はしたから、攻撃に移りましょう。


俺は敵に狙いを定めて三発撃つ、所謂トリプルタップってやつだ。そしてその直後男に弾が当たった。狙い通り胸に二発、頭に一発当たる。その直後走る男の身体から力が抜け、身体のバランスを崩し、つまずいたかのように転がり、動かなくなる。


敵の中でその様子を見ていた者が立ち止まりここまで聞こえるほどの声で叫ぶ。他の者はその声を聴いて足を止め振り返り、そして死んでいる仲間を見て混乱し始める。


初めての人殺し・・・・・・でも今そんな事を気にしていたらこっちが殺される。だから、迷わず敵をるのみだ。


「隙だらけだよ」


止まっている敵達の内一人に狙いを定めて俺は三発撃つ 三発の内 二発が腹部と胸部に当たり膝立ちなった所を胸部に二発撃ち仕留める。


「二人目!」


盾を持っている敵がこっちからの攻撃だと気づき、盾の裏に隠れて走って来る。その敵の身体があるであろう場所へ向けて五発連続で撃つ、すると弾は盾を貫通して裏に隠れている敵に当たり盾に潰される様な形で倒れる。


「敵も今ので気づき始めたか」


「な、何が起こっているんだ? 敵がいきなり倒れた始めたぞ」


「もしかして今のってアナタが倒したの?」


今グエルさん達に説明している暇がない。だって敵は体制を整えてまたこっちに向かって走り出して来るのだから、その中で弓を持っている物はその場に止まって矢を放って来るが弓の射程距離が届かずに、私達に当たる前に地面に突き刺さってしまう。


俺は万が一矢が降って来ても良い様にニーリングからスタンディングに姿勢を変え、セレクターをセミからフルオートに切り替えから敵の一人を狙い、バースト撃ちをする。敵は腹部と肩に当たり敵の動きが止まった所を、またバースト撃ちして敵を倒す。


「四人目! 」


でも、こんなやり方じゃ倒しきる前にこっちがられる。仕方ない!


俺は四人目を倒した後に目的を敵を仕留める事から敵の動きを止める事に変更する。


狙い方を先ほどとは違い右端の敵から左端の敵まで点をなぞり書きする様に敵を狙い、照準が合った所でフルオートを叩き込み、途中で弾が無くなりそうになったらリロードをしてら中断した所から、また敵をなぞる様に狙い撃つを繰り返す。


約25メートル先で、敵のほとんどが身体の何処かに弾が当たって負傷して足を止めているか、倒れて動けなくなっていて、こちらに向かって来るのを止めている。

敵は部が悪い感じたのか恐怖したのか分からないが叫びながら逃げ始めた。その内の1人の膝を撃ち抜き逃げられないようにする。


「さて、あの人を回収して話しを聞きましょう。話が違う! とか、割に合わねぇ!! って言うことは誰かに雇われている可能性がありますからね」


「・・・・あ、あぁそうだな。お前の持っている鉄杖は武器だったんだな」


グエルさんが聞いて来るので、簡単に答えておこう。


「そうですよ。私しか使えない武器です」


他のみんなは目の前の光景を見て呆然としている。


「ウソ・・・・・・たった一人で三十人の冒険者を相手をするなんて、アナタ一体何者なの?」


エイミーさんが質問をしてくるので、エイミーに笑顔を向けながら答える。


「えっと、多分ただの人です・・・・・・かね?」


「何で私に聞くのよぉぉぉおおおおおおっ!!?」


いやだって、神様が作った身体だから人間かどうかも怪しいし・・・・・・ね?


その後もエイミーさんの大声が草原に響き渡るのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る