第2話

「ふぅ、こんなもんだろ」


30分ぐらい運動して身体を少し馴らした。


やっぱり身長が175cmから159cm(目測)になると感覚がかなりズレるな。でもいくら動いてもこの胸が邪魔に感じないのが不思議・・・・・・もしかして神様のおかげ? っと、そろそろ出発準備をするか。


メニューを開き今着ている服からPMC風の格好黒いTシャツとジーンズを取り出してからそれに着替えて、コンバットブーツを履く。そしてニーパッドを膝に着けてから頭にヘッドセットを着ける。そしてチェストリグを装着すると5.11タクティカルグローブを手にはめて手を開いたり閉じたりしてサイズが合っているか確かめる。そして最後に腰ベルトにCQCホルスターを着けて完成。


「うん、いいねいいね!」


次に武器を用意。メインウェポンに俺の愛銃ACE32 (7.62×39mm弾使用)にEoTech EXPS3と35連マガジンを着けたカスタムタイプと、セカンダリーにJERICHO941PSL(9×19mm弾使用)とフルタングカランビットナイフを装備する。


「何か、テンション上がってきた!」


弾の入ったマガジンをポーチの中に入れ、装備を再確認した。


「よし、準備完了いざ出発!」


夢と希望を胸に抱きつつ街に向かって歩き出す。最初に降り立った、あの木が一本だけ立っている小高い丘から道に出るまでに何度かモンスターと戦闘をしたが、ここのモンスターはレベルが低いのかほとんどがガリルを1発か、ジェリコを1〜2発撃っただけで終わってしまう。倒したモンスターを神様にどうすれば良いか聞いたところ。


『アイテムボックスに入れて、後でギルドに解体して貰えば良いよ。あ、そうそうギルド登録する時は冒険者ギルドじゃなく、総合ギルドで登録した方が良いよ。後、メールでお金のレートを送っておくからね。べ、べつに忘れていた訳じゃないからねっ!!』


いや・・・・・・お金に関しては忘れていたでしょ。でも、何で総合ギルドで登録した方が良いんだろう? まぁ、いいや町で調べよう。すぐに分かる事だと思うし。


しかし道に着いた。ここからなら車で行けば楽にたどり着くんだけど・・・・・・うん、車を使わず歩いて行こう。変なのに絡まれるのは嫌だからね。


それから道を歩いて街まで後半分のところで問題が発生した。何故か俺の隣でこの馬車がずっと着いてきているのだ。この馬車に会う前に3台の馬車が猛スピードで俺を抜いて行ったのに、何故かこの馬車だけ俺を追い抜いて行かないのだ。しかも追い抜い行った3台と違って護衛の人が5人いて5人全員が馬に乗って同じ装備を着て護衛しているし、馬車自体も高そうだし、家紋のようなものもあるので恐らく身分の高い人を護衛しているのだと思う。


俺は最初は警戒していたけど今は困惑している。レーダーに敵マークになってる訳でもなく、向こうが声を掛ける訳でもない。ましてや敵意を向けて来る訳でもないのだから、ただ俺の隣でついて来る様に馬車を走らせているただそれだけなのに、威圧感があると言うかその・・・・・・とにかく本当に俺はどうして良い分からない状態だ。


・・・・・・あ〜〜〜、もう嫌だっ!!


この微妙な空気に耐えかねた俺は ええい、ままよ!! と思いながら勇気を出して声を掛ける。


「あ、あのっ!!」


「ん?」


護衛の1人、男の人がこっちを向いた。恐いと感じるがここで引き下がるわけにはいかない。


「わ、私の事は気にせずに・・・・・・どうぞお先に行って下さい」


すると、その人は仲間の顔を見た後に笑顔でこちらを向いて来た。


「もしかして、俺たちが隣にいるのがずっと気になってたのか?」


えぇ、そうです。もしかしたら攫われるかも知れないと考えてましたよっ!!


「は、はい」


「安心してくれ。俺達はお前に危害を加えるつもりは全くない。というか家紋のついた馬車でそんなことをする奴はまずいないよ」


「アナタを気にして追っているんじゃなくて、私達の馬車の問題でこんなに遅いのよ」


男の人の隣にいる女性が続けて説明をする。


「どういう事ですか?」


「実はね。馬車に「馬・・・・・・を止・・・・・・てくれ」あっ!!」


ん? 馬車の中から微かに声が聞こえたぞ。もしかして病人でも乗っているのか?


そんなことを思っていると話していた男の人が 馬車を止めろ! と、馬車を操縦する人に大声で指示して、馬車を止めさせ、護衛だと思われる人が即座に扉を開く。すると馬車の中から顔を青くしたオジさんが口を押さえながら降りて来たが、その場で四つん這いになって嗚咽している。


「え、まさか馬車が遅い理由って」


「そうなの、公爵様ってば馬車酔いが酷くてね。速度を上げるとすぐよ」とオジさんを指さす。不敬罪とか大丈夫なのか。


「えぇ〜〜〜・・・・・・」







「いやぁ〜、君に見苦しい所見せてしまったね。水まで渡して貰えるなんて、礼を言うよ」


「いえ、気にしないで下さい」


あのあと、馬車酔いがひどかったのかオジさんは[見せられないよ!]してしまったので、俺はクレジットを使いミネラルウォーターを買ってオジさんに渡した。ゲームではそれなりに稼いでいたのでこのくらいは問題ない。


「家紋を見てわかったと思うが、私の名前はネルソン、ネルソン・ディア・バルデック公爵だ。アナタのお名前は?」


「エルライナです」


「そうか、ところでエルライナ、キミはもしかして、ゴーゼスに行く途中なのかい?」


ゴーゼス・・・・・・確か俺のマップに目的地に設定されている街の名前だったはずだ。


「はい、町に行って総合ギルドに登録をしに行く所です」


「私はキミにお礼したい。良かったら私の馬車に乗せてってあげるよ?」


「あ、いえ・・・・・・気持ちだけ受け取ります」


だって馬車の中凄く臭そうなんだもん。それに貴族と一緒って厄介事しかなさそう。


「俺達と着いて行った方が良いぞ。見た所お前はナイフしか持って無いみたいだからな」


みんな銃が目の前にあるのに武器として見てない・・・・・ってことはこの世界に銃は存在してないってことだよね。まぁ公爵なんて偉い人も馬車を使って移動してるみたいだから予想はできてたけれど。


「いえ、大丈夫ですから」


護衛をしている女性が、何かに気づいた様子を見せると自分が乗っている馬の背中を指を差す。


「じゃあ、私の馬の後ろに乗せて上げるわ。これなら良いでしょ」


女性がそう言うと何故か周りは納得した様子を見せている。


皆さん何か勘違いしていらっしゃいません?


「うむ・・・・・・私はもう大丈夫だから、そろそろ出発しよう。エルライナさんもエイミーの馬に乗りなさい」


うわぁ・・・・・・もう拒否権はなさそうだ。素直に言うことを聞こう。


「はいぃ・・・・・・分かりました」


こうして、ゴーゼスまで連れて行って貰う事になった。


「そういえば、まだ私達の名前を言ってなかったわね。私の名前はエイミー・リステット、人族よ。隣にいるのがグエル、私達の隊長、ちなみに私達はこの国の騎士団に所属してるわ」


「俺がこの部隊隊長 グエル・ラト・ホンドウ 黒狼こくろう族だ。よろしく!」


ん? ホンドウ?


「ホンドウ って変わった名前ですね」


「彼のホンドウと言う苗字は昔異世界からこの世界に来て魔王と戦った勇者の一人の苗字らしいです。そして彼はその勇者の末裔なのですよ」


へぇ〜、俺の前に勇者召喚をやってたんだ・・・・・・てか後ろから教えてくれたイケメンさんは誰?


「申し遅れました。僕の名前は キース・イディア、種族はエルフです。以後お見知りおきを。そして、僕の隣にいる彼女の名は リズリナ、その奥にいる彼はエイド。2人とも人族です」


「エルライナです。皆さんよろしくお願いします」


とりあえず挨拶は基本だからしておかないと。


キースさんに紹介された2人の内、女性の方は よろしくお願いします と言ってくれたけど、エイドさんの方は あぁ、とだけ言って周りを忙しなく見回し始めた。


この人は落ち着きがないなぁ。周りを警戒しているのか? それとも始めての任務だから緊張しているのか?


「所でお嬢さん、もしお時間がありましたら、ゴーゼスでお茶でもしませんか?」


「・・・・・・え?」


このキースさんって人、何を言ってるのかな?


「お前はまたナンパか? 出発前にエイミーとリズリナに同じことを話してなかったか?」


「エルライナさん 気にしなくて良いわ。彼は相当な女垂らしだからね。付き合わなくて良いわよ」


「酷い言われようですね。僕はただ美しい女性の笑顔が見たいなぁ。ただそう思っているだけですよ」


「どうだか」


グエルさんとエイミーさんの会話を聞いている限りだと、彼は相当に女好きらしい。それよりも俺が気になるのはエイドさんの方だ。


「あの、エイミーさん」


「ん、何かしら?」


「エイドさんって任務中何時もあんな感じなんですか?」


「うーん、何時もはあんな感じじゃないわねぇ。彼今日は機嫌が悪いのかしら?」


ふーん、機嫌かぁ・・・・・・イラついてるような様子には見えないんだけどなぁ。


『注意!12時方向に危険を感知、敵の可能性有り』


ッ!? て、敵!!


レーダーに映っている敵マークはこの先だ。このまま進んだらヤバい、グエルさん達に教えないとっ!!

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