第1話

〜〜 倉本 春人 side 〜〜


「ん・・・・・・んん・・・・・・うぅ〜〜〜ん・・・・・・・ あれ、ここは?」


あぁ、そう言えば神様に転生して貰ったんだっけな。で、俺はこの木に保たれかかって寝てたのか。


座ったまま辺りを見回すと、草原が広がっていて遠くには山も見える。そして何よりも自然に囲まれているおかげなのか空気が澄んでいるので気持ちが柔らぐ。


「へぇ〜、ここが異世界か楽しみになって来たな・・・・・・ん?」


あれ? ・・・・・・自分の声がおかしい? 俺の声ってこんなソプラノボイスじゃなかったよな? 確かこの声どこかで聴いた様な気がする。


俺は自分の喉に手を当ててからもう一回声を発そうとする。


「ん、んん! ア〜、ア〜、ア〜・・・・・・あ、あれ?」


やっぱおかしい。風邪を引いたらこんな声するわけないし・・・・・・ん?


「うわぁ、綺麗な手だなぁ・・・・・・ってまさかぁ!!」


顔を下に向けるとそこには豊かな胸があり、そして目に写る髪の色が黒では無く白いストレートヘアで、髪に手を触れて長さを確認すると腰まで髪があった。しかもサラサラできもちいい。

そして最後に股の間に手を当ててアレがあるか手で触って確かめるが、案の定というべきなのだろうか、自分の身体に有るべき男の象徴が無くなっていた。


「な、ない・・・・・・た、たたたたた確かこの姿ってぇ、・・・俺がやってたFPSゲームのアバターの姿・・・だよ・・・ねぇ?何でこの姿になってるんだ?」


動揺しまくっている中、突然目の前にスクリーンが現れた。あのゲームの便利な機能の一つビデオチャットだ。


『や、やあ倉本春人くん。ぶ、無事に転生出来た様だね。身体に、い、違和感が、あ、あったりは、しないかな?アハハハハハ・・・・・・』


俺はムスッとした顔をしながら神様を睨む。


『き、綺麗な白い髪にアメジスト色の瞳にスラッとした身体にDカップの胸!! いやぁ まさに絵に書いた様な美少女だねぇ!春人くん、キミはアバターを作る才能があるよっ!!アハハハハ・・・・・・ハハハ・・・・・・』


・・・・・・おい、笑って誤魔化すなよ。


「・・・・・・他に言う事があるんじゃないの?」


神様は目を左右に泳がした後に真っ直ぐ俺を見つめてこう言った。


『ごめんなさい僕ミスを犯しましたっ!!』


あっさり自分のミスを認めたよ。


「どうしてこうなったか説明してくださいっ!!」


俺がそう言うと神様は申し訳なさそうな顔をしながら説明し始めた。


『実はね。一番手っ取り早い方法を選んだけど最後の最後でミスを犯した結果こうなったんだ』


「一番手っ取り早い方法?」


『そうだよ。キミがやってたFPSゲームの設定とデータをまるまるコピーして身体を作った後に、キミが本来入るはずだった身体に能力とキミのゲームデータを反映させる。いわゆる複製法だ。その後に魂を入れて送るって手筈だったんだけど・・・・・・間違えてキミがゲームで使っていたアバターに入れてしまったんだ』


神様の後ろで横たわっているのが魂が入るはずだった身体みたいだけど・・・・・・ん?


「普通にその身体にデータだけを入れれば一番手っ取り早いと思うんですけど?」


『実はね。そっちの方が時間がかかるんだ。簡単に言えばバグ修正に色々書き変えないといけないから時間がかかるから、やりたくない。さっき言った通りのやり方をすれば、元のモデルが分かるからどこにバグがあるか分かりやすいから修正しやすいんだよねぇ。まぁ修正作業も念入りにやったから、その身体はそういった心配はないから安心してね。それと、今さら気づいているかもしれないと思うんだけど、魂がその身体に適合しているから・・・・・・やり直しは効かないんだ。ゴメンね』


もうどうにも出来ないのかよ、はぁ〜〜〜・・・・・・。


「・・・・・・ん? よく考えたらたらこっちの方が都合が良いかも知れない」


『え? どう言う事?』


「あの時、クラスまるごと転移したんですよね?」


『うん、そうだよ。それがどうしたの?』


「転移先で一人欠けていると知ったら」


『それは、大騒ぎに・・・・・・あっ!?』


神様も気付いたようだ。


『キミを探しに来る! 今の姿なら誤魔化せるねっ!!』


そう、国の関係者が探しに来て俺を見つけたら無理矢理にでも国に連れて行ってクラスメイト達と合流させようとすると思う。いや、絶対クラスメイト達と会わせる。しかも国が相手だから草の根かき分けてでも探し出そうとする可能性だってある。


「そう、この姿なら全くの別人だから アイツ、倉本 春人じゃないか? と疑われる事は先ずはない! 神様、俺は倉本 春人じゃなく、FPSプレイヤーのエルライナとして生きて行くよ」


『そう・・・・・・うん、わかった。じゃあさっきの説明の続きをするよ。ゲームの時と変わった所もあるからね』


神様の説明によると俺がやってたあのゲームとは基本的なところは変わらないと分かった。


視界の左上に円状のレーダー、右下にHP、メイン武器の残弾数、セカンダリーの残弾数、グレネードの残量、治療薬の数、蘇生薬の数が透けたスクリーンになって見える。

そしてメニュー画面を開きたい時はあのゲームと同じで念じれば出てくる。

あと、敵を倒せばクレジットが貯まり、貯まったクレジットで武器や弾薬や乗り物に燃料や修理に衣類や食糧まで買えるストアを作ってくれた。ショップまで行く手間が省けて助かる・・・・・・てか異世界にショップがあるわけないよな。


「ストアを作ってくれたの以外はゲームと変わらないですね」


『他にも変わったところはあるよ。ログアウトボタンと環境設定の一部が無くなったのと、ストアの衣類にキミがいた世界の普段着を追加したり、食糧もレパートリーを増やしたし、あと日用雑貨も買える様に組み込んだよ。そして保管庫・・・・・・まぁキミ達の言葉で言うとストレージか、その容量を拡張しといたよ。一応ストレージの中はイジってはないけど、抜けてるアイテムとかないか確認して見て』


「分かりました」


俺はメニューを開き保管庫を開き、弾薬や薬やドロップアイテムの確認をしたついでに、武器庫と格納庫のカスタムパーツボックスさらに衣装庫もチェックしておく。


・・・・・・うん、問題ないね。ストレージの保有数が200から500に拡張されたのはありがたい。


「問題ないです」


『じゃあ、次にキミの身体について説明するね。君の身体はRPGの設定じゃなくFPSゲームの設定なのはもう話したよね?』


「はい」


『キミの身体能力を含めた、色んな所を強化しといたよ。後、身体は生きてさえいれば身体の何処に傷ついても治る。ましてや欠損しても時間が経てば治るよ』


「身体能力とかの強化は良いとして、欠損まで治るなんて化け物みたいじゃないですかっ!!」


『だってさ、FPSゲームで身体が欠損する事ってある?』


・・・・・・ない。血の表現があっても、先ず欠損なんてあり得ない。


『そしてもう一つ、その身体の最大の特徴は女性の悩みが一切ない事』


はぁ? 何を言っているのこの神は?


『分からないみたいだね。詳しく言うと、歳を取っても老けない! いくら食べも太らない! 重い日がない! など他にも様々な女性特有の悩みが、君の身体にはないのだっ!!』


それを女性に話したら絶対敵に回すだろうなぁ・・・・・・。


『どう、凄くない? 女神達に話してみたら、 羨ましい〜。 とか ギルティーッ!! とか 奴は私を敵に回した。滅殺する!! とか言ってたよ!』


ギャァァァアアアアアアッッッ!!? こいつのせいで女神達が敵に回ったよっっっ!!というか神様たちにもそ・う・い・う・の・あるんだねっっ!


「余計な事しないで下さいよぉぉぉおおおおおおおおおっっっ!!?」


『次に武器を含めた道具の話をするよ。武器と乗り物はキミにしか使えない。』


神様はサラッと話しを流している。あーだこーだ言いたいけど説明の方が重要だから聞こう。


『他の人がキミの武器を取ろうとしても大丈夫だよ!君以外の人がキミの武器を取った瞬間に武器が消えて武器庫に戻るし、乗り物の場合はエンジンを掛けようとしても掛からないよ』


おぉ、便利! まさに俺専用装備!!


『でね、今の君は全ての乗り物をプロ並みに扱える様にしといたから、バンバン使ってね!』


・・・・・・うん、目立つからなるべく使わない方向で行こう。


『回復薬、蘇生薬はこの世界の基準で言うと、伝説の薬に匹敵するから使い所に気をつけてね』


「分かりました!」


ゲームじゃいつでもどこでも手に入るアイテムだけど、現実になると蘇生まで出来る薬の類は伝説になっちゃうんだ。


『最後に、アイテムボックスに銀貨20枚あるから有効に使ってね。今から町にマーカーを付けるよ』


マップにマーカー付いた。位置的に計算すると・・・・・・一時間ぐらいで着きそうな距離。


「それじゃあ少し身体を馴らしてから行きます」


『え、すぐに行かないの?』


「だって、前の身体との動きのズレ知って修正したいから」


身長と体格が全く違うから体を動かして把握しておかないと。


『うん、分かったよ! 結界をこのまま維持しておくよ。結界の外に出たと同時に結界が消えて無くなる様にしておくからね。何かあったらフレンドに僕を入れといたから連絡してね。じゃあね! バイバイ!!』


神様と通信が切れた。


さて、この身体を動かしてある程度慣れておかないと戦いの時に困る。とりあえずシャドウボクシングから始めるか。


俺はその場で軽く準備運動をしてから、シャドウボクシングを始める。

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