第32話 さよなら、じいちゃん

ばあちゃんが亡くなった。

私のことを溺愛してくれていたばあちゃん。

私は宇宙(そら)に還っていくばあちゃんを見送りたくて、斎場の外へ出て空を眺めることにした。

そこへ私にセクハラをするじいちゃんがやって来た。

「やれやれだな」

そう言うと、一服するために胸ポケットから煙草を一本取り出し火をつけた。途端に吐き出す煙に咳き込みはじめる。

「じいちゃん、煙草はやめなよー」

そんな私の忠告を聞いてか聞かずか、苦しむじいちゃんは煙草から手を離した。しかしじいちゃんの周りから煙はなくなるどこか、どんどんと濃い灰色に包まれていく。

苦しくて息も絶え絶えのじいちゃん。

(この人も連れてくよ……)

ばあちゃんの声が一瞬だが、しかしハッキリと聞こえた。

「ばあちゃん。ありがとう!」

私は晴れやかな気持ちでその場をそっと離れ、部屋へと戻った。


「ねぇすずちゃん。じいちゃんを見なかった?」

「さぁ、知らなーい」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る