第30話 西瓜
義母は西瓜を嫌っていた。
子供の頃何度か種を噛んでしまい、その食感の悪さ苦さで気分が悪くなったからね、と夏が来る度にそう口にした。
それでも、どうしても家族に食べさせたかった私は、長男が三歳になる頃一度、スイカを買ってきて夕食後に食卓に出したが、義母は「きっと後悔するよ」と呟き、食べずにその場を去った。
それ以来、私が西瓜を購入することはなくなり、いつの間にか食べたいとも思わなくなってしまった。
息子は学校の給食で出されたこともあったようだが、食べ慣れないものだからと友人にあげたらしい。
義母が体調を崩し、他界するまではあっという間だった。
お腹が異様に膨らんでいたので、死因を特定する為解剖に同意したが、結果を聞いて喫驚した。
「おばあちゃんは西瓜を身籠っていました」
見せてもらった写真に写っていたのは、子宮内いっぱいに這っている緑のつると葉と、赤子の頭程の大きさに育った4個の西瓜だった──。
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