第26話 コーヒー

 なんの予定もない日差しの暖かい土曜の午後は、いつも決まって大好きなコーヒーを淹れる。

 お気に入りの豆を鼻歌まじりに挽いて、沸騰したての熱いお湯で丁寧にゆっくりと。

 淹れたてのコーヒーはとても香り高く美味しいけれど、あなたを想って飲むコーヒーは私の意識をいつも以上に研ぎ澄ませる。

 ミルクを多めに入れてみてもほろ苦さが飲み終わった後まで続くのは、まだ私があなたを忘れていないからなの?


 お揃いのマグカップの片方が食器棚の中、ぽつんと俯いてる。


『あなたには多分もう二度と会えないけど、あの子ならあなたの本当の笑顔をきっと取り戻してくれるよ。

私は遠くから、あなたをずっと見守っています』


 あなたとの想い出に耽りながら、私は二杯めのコーヒーをおかわりする。


 二杯目のコーヒーにはあなたが私のために用意してくれた、特別な薬を砕いて溶かして……。



置き手紙があなたに届きますように──。

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