第11話 キタマクラ
小学3年生の夏休みに、母方の祖母の家に母と泊まりに行った翌日、海で泳いでいて初めて足がつり溺れて死にかけた。
通りかかった知らないお兄さんが救助してくれたのでなんとか助かったが、祖母の家で北枕で寝てしまったせいだと確信した。
前日の夜中に見たことのない魚が夢に現れ、
「キタマクラは必ず死ぬ」と言っていたからだ。
それ以来自宅でも旅行先でも、北枕で寝ることは決してなかった。
結婚した時も、妻に北枕だけは絶対にイヤだと伝えていたが、そういうのは関係ないとTVで言ってたと言いはり、一年後に引っ越した先のマンションでは北枕で寝ることになってしまった。
だから俺はその後、この魚を釣ることだけを目標にしてきて、今日ようやく釣ることが出来て気分が高揚している。
この毒で今夜、妻は死ぬだろう。
『キタマクラ』というふぐの猛毒で。
だからあれほどキタマクラは必ず死ぬと、口が酸っぱくなるほど伝えてきたのに──。
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