第9話 病んでる君が見てみたい

 妻と結婚して2年が過ぎた。1歳の娘も可愛い盛りだ。仕事は残業が多少あり辛いこともあるが、今の生活にはほぼ満足している。

 だが、結婚は良いことばかりではないと皆言う。いつの間にか夫より子供優先の生活になり、妻は夫をおざなりにするとよく聞く。しかし今のところそういった気配は全くない。


 俺自身も育児には積極的に関わっているからだろうか?俺が在宅中に娘が泣けば妻より早く駆けつけるし、あやすのも食事をさせるのも正直妻より上手いと思う。だから育児に困った妻の顔なんて見たことがなかった。


 だが結婚式のとき

『病めるときも健やかなるときも相手を愛する』

 ということを誓ったからには、病んでいる妻を見てみたいのだ。しかし妻はまだ若い上にそんな気配は今のところ全くない……。

 だから俺はいたずらしたくなり、ある日とうとう隠し持っていた離婚届を妻に差し出してみた。


 さぁ妻が泣き出すぞと期待した次の瞬間、妻が取り出して来たものは娘と俺とのDNA鑑定書だった──。

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