第2話 チラシの誘惑

 台風が過ぎた次の日のこと。


 倒れた物干し台を起こそうとベランダに出ると、チラシの切れ端が物干し棹にくっついていることに気が付いた。

『にん○ん 1本 5○ 円 』


 チラシは所々読めない箇所があったが、大好きな人参が安そうだったので、午後から車でここに向かった。


 着いた先は大きめの建物。ボロボロの状態のチラシの切れ端を小太りの男の従業員に見せると、私の顔を見て、にやりといやらしく笑った。


「お客様は見る限り30代の前半でまだまだお美しいのに、もっとお若くなりたいのですね?」

 そう言うと、書類の記入を求めてきた。


「野菜を買うのに書類が必要なんですか?」

 驚いてそう聞くと、

「おやおや、これはにんげん 1体 50万円 と書いてあるんですよ」


「あなたはこれから我々と契約を結び、自殺志願の若者を騙し連れてきて、臓器は外国に、血は若返るためにあなたに還元するのです。残念ですが、この秘密を知ったので、もう逃げられませんよ」


 そう言うと、私に何かを注射した──。

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