紺碧を巡る星

街明かりの消えぬ夜に

ふらふらと歩く僕は

ふと乾いた空を見上げた

雲のない澄んだ紺碧に浮かぶ

あざやかな星雲の影や

凛と冴える金の月に

刹那の間にときめいて

僕はつま先で立って手を伸ばす

届くことはない手を 真っ直ぐに


教科書には載っていない

名もない明かりが弾ける

その光の尾を辿るように

静かに辺りを見回せば

頬を刺す針のような空風も

確かに記憶に残るようで

深く深く目を閉じれば

一万光年離れた星の産声が

耳の奥で響くようで


いつか見たほうき星が駆ける

一瞬の恋の時間は

あまずっぱくて 寄せては返して

戻らぬ日々の存在の証明を

紺碧の夜に刻んで

僕はちいさな両手を広げて

包み込むように空を抱きしめる


街明かりの 消えぬ夜に

近いようで 遠いけれど

きらめく星は 今日も確かに

紺碧の空を巡っているから


僕を見守ってくれていると いい

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