巡る日々

胎内から出た日の

日付しか覚えていない

はじめての呼吸の味も

産声を上げたときの気持ちも

今さら思い出せない


いつか握った友の手の

ぬくもりもあいまいだったり

昨日食べたもののにおいすら

朝には忘れていたりする

そんな不確かさを

もう何回もくりかえしてきた


意識はフェードアウトする


深い眠りの底は

きっと死に近い感覚

目を閉じて空ける前後の

世界との刹那の別れは

僕を何者かへ

いつの間にかすりかえる


更新されていく


目が覚めて 蘇生する一瞬

暗闇から浮き上がる感覚が

指先まで流れるとき

僕は世界の表面をなぞって

すっ と 起き上がる


おはよう 産声を上げて

世界にフェードインする

毎日はその繰り返しで

巡り続けていく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る