残虐トランペジタロン
シオランがどこかでニーチェとプラトンだけが人間であることを恥じるのを止めずに哲学を続けたというようなことを書いていた覚えがある。「無知の知」という言葉は自分の知らないことについては素直に認めて探求を続けろというような意味に考えられているが実際のニュアンスは知らないことについて誰かが知っていると考えることは許されないという方に近い。技術的に洗練された数的形式で物事を判断することがなぜ政治的には詭弁になってしまうのかを産婆のように伝達することは財産の管理とは両立しない。なぜだろうか。それは法律が人間の行為を共同体として認めるやり方と弁証法の議論が同一の形式で所有の資格を措定するからである。学問教育は知識が財産の資格として認定されることを要求するのに政治闘争は誰が財産である物質を価値であると欲するかを決める。この誰かは生物的な意味での人間ではあり得ないので必然的に不死の存在が象徴的にならなければならない。不死の存在が象徴的であるのは財産の価値が生命の持続を保証する場合であるのにそれは物質的な生存の脅迫によってしか成立させることはできない。ここから法の侵犯の同一性を善として統一させるための虚構が作成されるのだが虚構は同時に物語として法の不自然な起源をも主張するので国家として領土化された大地と権力の統一性のどちらが先んじて存在していたのかは学問教育の難題として追放されるか政治問題の弾圧として表現されるかのいずれかになる。論理的に考えるとこの両者は同じものなので片方を技術的に解決しても別の形で再度抑圧が戻ってくることになり啓蒙的に処理すると最終的な暴力が軍隊の存在として煽動されることになる。代表的な例はまさに家族と祖先の関係における身分制度の特権である。しかも悪いことにこの矛盾はまさに伝統の旧例が制度の偽善として適正な形式を保守する商業上の生産性へと結び付くことで集団的な利潤を権利として獲得させる。そしてこの重なりあいこそ職業的自由の本質にほかならない。主人の死を解放の努力として労働に委託することができかつそれを財産の増加として貨幣の流動性に商品の武器として評価することができる主体こそ種族としての人類だからである。時間が直線的に動き続ける未来としての歴史を書き続ける党派団体の勝利という神話はエネルギー資源の効率的な分配という口実で科学的未来の実現を目的とした自然探求の要素に還元される。ここまで来るともはや何が問題であったかの否認が起こる。国家とは民族的暴力の集団的決定権であるにも拘らず商業的普遍性の自己実現を文化教育の一環として信じ始め神を歴史の変遷であるような寛容の一規範に貶めることであらゆる個人の自発性を根こそぎ刈り取ってしまう。だが民族的暴力とは永遠性に関する主人の死の一般的形態に過ぎないのだから王権の復古を目指す真摯な情動という名分で侵略戦争と敵の殲滅という司法措置を合体させて共同体と縁もゆかりもないものに仕立てあげるのでなくてはならない。この分裂を解消する手段が人種差別と労働者団体の弾圧をテロリズムからの終わりのない防衛に関与させるサイバーセキュリティの開発競争である。だがセキュリティは土地に対する権威を有さないので充分な脅迫になることは出来ず結局核ミサイルの警報装置をめぐる応酬に冷戦時代と同じく落ち着いてしまう。ところが平和憲法はこの問題をとっくの昔に解決済であり核攻撃の実例として国がどうなるかを証明している点でも完全に処理済である。つまり核攻撃すれば確実に他国家の住民を奴隷化できしかもいかなる反抗も行わせずに象徴的権威を簒奪することができしかもそれは自然発生的なものだと神話的には解釈されるということである。そして問題のすべても単に核攻撃をすれば民主主義はどうなるかという点にある。原発事故でわかったことはもはや人間は軍事的に死の恐怖によって利害関係を考えることは不可能になったということではないのか。共同体が敵対集団の防衛として結束を呼び込むことは集団の生活の方が個別的な生存よりも安心を確保できると信頼できる場合にしか生じない。原発事故が破壊したのは技術的な意味でも議会的な形式でも普遍的な集団的決定権であり従って個人の決定すべてに政治的無知は不可能になったということなのだ。そしてそれは文学の殲滅であり思想の荒廃であり共感の画一化であり存在の飽和だ。核攻撃の記憶を賭けて戦争をする悲劇的な神話構造を預言的な回帰と重ね合わせた召喚決闘者にのみ神を象徴ではなく自分の心の従うべき道標として創造するに任せることができる。こうして我々はやっと叫ぶことができる。『思想はもううんざりだ』と。
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