第十一話 二次会は本命狙い
アンデッドパーリーの片付けのため大穴を掘っている最中、ずっとゾンビについて考えていた。そのおかげで、穴を掘り終わる頃には解決策を思いつけたのだ。
まずスケルトンジェネラルの装備品を回収し、スケルトンの魔石を拾い集めていく。次に穴の中にスケルトンの骨を全て入れる。ここまでは予定通りである。
そしていよいよゾンビの解体をしていく。方法は《念動魔法》で穴の縁に足を穴の中に向けて入れる。あとは魔石のある部分である胸部に向けて石を投擲していくだけ。
ドパッと水風船のように割れると、足の重みによって自然と穴に落ちていくのだ。投擲を終えた後は穴を掘った
スケルトンの魔石とゾンビの魔石を木の棒で掴み革袋に入れる。川を見つけたときにしっかりと洗うためだ。
ただ問題が発生した。アンデッドの素材とプゴ太郎の素材を一緒にしておきたくないのだが、【異空間倉庫】に空きはない。こればかりはどうしようもないので、また整理でもしようと思い【異空間倉庫】を開けると、収納数が二十種類に増えていた。疑問に思いステータスを見てみることに。
スキル【魂霊術】☆☆
魔力の使用または霊力の使用で発動。
スキル内容も異なる。
《魔力》
透過魔法……気配を遮断し物をすり抜ける。
念動魔法……魔力で物を動かす。
幽冥魔法……あの世とこの世を結ぶ。
《霊力》
他の表示は一切変わっていなかったが、【魂霊術】の横の☆が増えており、スキルも二つ追加されていた。その影響が【異空間倉庫】にも出ているようだ。さらに魂が少しだけ大きくなった気がする。
それにしてもスキルが成長することを初めて知った。しかも今回の新スキルは当たりだ。吸収スキルで発声できるスキルを入手できれば、もしかしたら話せるようになるかもしれない。そしてそれはいつか出会う神の娘をよろしくするときに役立つことだろう。
ということで、スキルを入手するために南下を一時中止して森へ行こう。
それからアンデッドセットは木箱がないのでロープで縛って収納した。
すると、いるわいるわ。今までいなかったのが不思議なくらいモンスターがいる。発声するにはしゃべる鳥やコウモリ、人型のモンスターが望ましい。ポールアックスを手に持ち、いざ出陣。
まず目の前に現れたのはオーガ。三メートルくらいの大きさで、どこから拾ってきたのかメイスを振り回している。その相手は俺ではなくゴブリンの群れだけどな。
ポールアックスを一度収納し、チャクラムを二枚取り出し投げる。雑魚のゴブリンに気を取られている隙に首を両断しようとしたのだが、硬すぎて少しだけ傷つけただけである。
一応バレないように死角から投げたのだが、すでに俺がいる場所を睨んでいた。意外と知能も高いようだ。これは期待できる。
チャクラムをそのまま操り、ゴブリンの首を両断していく。こちらは簡単に両断でき、ゴブリンに混乱を生じさせることができた。オーガはゴブリンが混乱しているせいで身動きが取りづらくなっており、攻めるのならば今しかないと判断する。
チャクラムを操作しながらオーガの背後に迫り、ジャンプして背中を足場に頚椎に向かってポールアックスを思いっきり叩きつけた。今度の攻撃は深く、さらに衝撃で前に転倒する。一応トドメで同じところにもう一度叩き込み、オーガとの勝負は勝利で終わった。
あとはチャクラムをもう一枚足して、ゴブリンの首をはねまくった。その間ずっと魂を喰らい続けて待ち、真っ先に魂を喰い終えたオーガの死体はそのまま収納した。
首狩りを終えた後はゴブリンの処理だ。ゴブリンは同じ種類と判断され、一塊で収納されていった。それとメイスは洗浄したいので、アンデッドセットにくくりつけて置いた。
ここまで終えると、俺は一度森の外に出てオーガの心臓を吸収してみようと思った。一度でスキルを取得できれば、南下を続けられるからだ。
しかし水場がない場所では全ての解体はできない。中途半端になるが心臓だけを取り出す。魔石は心臓の中にあるため、魔石もきれいに取り出せるのだ。
――《
俺は取り出した心臓にスキルを発動した。このスキルによる変化は、魂の一部が猛獣のように変化して心臓に食らいつくというものだった。そして吸収を終えた後に残されたものはきれいな魔石だけである。
頼むー! 頼む、頼むー!
つい祈ってしまうほど発声スキルを切望していたのだが、オーガの心臓は期待を大きく裏切ってくれた。確かにランダムと書かれていた。でもそこは、ビギナーズラック的なものを与えてくれるのが神の仕事だろう。
仕方なくオーガをしまい、もう一度森の中に入る。
一応、先ほどの戦いが無駄ではなかったことをすぐに実感できた。首狩り現場にはモンスターが押し寄せていたからだ。
血の臭いに惹かれてきたのかぁ。じゃあメシを食わせてやろう。
俺は【異空間倉庫】からゴブリンの死体を取り出すと、モンスターの群れに放りこんだ。臭いに釣られてゴブリンに飛びつくモンスターもいるが、ほとんどは興味を示さないモンスターばかりである。
おそらく無視しているモンスターは知能が高いのだろう。もしかすると、発声スキルを持っている可能性がある。
よし! チャクラム作戦決行ーー!
と、またも首狩りをしようとしたのだが、血だまりに集まっていたモンスターが全ていなくなってしまった。
えっ? 何で? どこ行った?
俺のチャクラム作戦にビビったわけではないはずだ。それなのに移動するということは、もっと上位のモンスターが来る可能性があるということだ。
すぐに認識阻害の外套に魔力を通し、いつでも使える状態にする。さらに武器庫から槍を三本取り出し、【異空間倉庫】の空き枠に入れる。魔法具にもそれぞれ一回分の魔力を装填し、準備完了である。
ズシッ、ズシッと地面が震えているような音を鳴らしながら現れたモンスターは、緑色の体に腕や足、胸に白い竜巻のような模様が入っているオーガである。先ほどのオーガよりも大きく、色も違うことから上位種であることが確定した。
「グオォォォォォォオーーー!」
血だまりに立ち叫ぶオーガに一瞬ビビるも、ここで逃げるわけにはいかないと自らを奮い立たせた。
会話がしたい! 会話がしたい!
と、願望を口にすることで恐怖を和らげる。そのおかげで最初よりはマシになったのだが、次の瞬間、隠れていた木ごと吹き飛ばされた。
何が起きたかは分かる。でも何をされたのかは全く分からなかった。
ただ鎧のおかげでほとんど無傷だ。
改めてオーガの様子を見ると、巨大なパルチザンのような槍を手に持ち、手当たり次第に振り回していた。しかもその巨大な槍は魔法具なのか、切断しただけの木が風に飛ばされたように吹き飛ぶのだ。
……無理だ。全然近づけない。ってかあの脳筋は森を丸坊主にする気か? 誰か止めろよ!
仕方がない。嫌がらせをしよう。それで無理なら諦めよう。
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