#遺書探し

笛吹ヒサコ

【自殺】

 妹が自殺した。

 妹は、どこにでもいるような高校二年生だった……と思う。


 残念ながらというべきか、僕はそれほど妹と仲が良かったわけではない。かといって、仲が悪かったわけでもない。どこにでもいるような兄妹だったと思う。


 それでも僕にとっては家族だったわけだし、遺書くらいほしかった。


 そうすれば、僕ら家族はこんなにも苦しまずにすんだはずだ。


 こうして、悪夢に悩まされずにすんだはずだ。


「……最悪」


 手探りで枕元のスマホを手にとって時間を確認すれば、まだ早朝と呼ぶにも早すぎる時間だった。


 夢の中で宙ぶらりんになった妹の恨めしそうな目が、まぶたに焼きついている。

 きっと補正がかかっている。


 だって、僕はまともに妹の首吊り姿を見ていなかったんだから。


 暗い部屋の中で、ぼんやりと光るスマホの画面。考えるよりも先に、半ば自動的に開いた検索画面。


『毒島事件 自殺 遺書 死者の声』


 何度も検索してきた単語たち。


 読めば死者の声が聞こえる遺書なんて、存在するわけがない。あの時も、今でもそう考えている。

 けれども、たった四つの単語たちが、妹の自殺の理由を探す手がかりなんだ。


 妹が自殺した日。

 母の悲鳴に続いて部屋に飛びこんだ僕の目に焼きついていたのは、首吊り姿ではない。ノートパソコンに表示されていた検索画面に入力された、四つの単語たちだった。

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