第7話 最強の勇者?


「えいっ えいっ えいっ えいっ えいっ」


私は毎日 剣の稽古を真剣に取り組んだ


おじいさんと魔王に聞けないので 剣について書かれた本を読んでいる


休憩していると声が聞こえてきた


人の声だ


私はやってくる6人に手を振った


近付いてきた男が私を見て呟いた


「勇者すず」


「えっ 私はこの城の王女イリスです」


よく似てると言われるけど……勇者すず様のこと好きなので悪い気持ちはしないけど……なんだか申し訳ない


「王女様でしたか 私はハリム 勇者ハリムです」


「あれが魔王です それ以上近付くと逃げられなくなりますよ」


「あれが魔王か 俺達が」


勇者は力強く答えた


「魔王は本当に強いですよ」


おじいさんもいるし きっと今なら逃げられる 無駄死にはしてほしくない


「安心してください 俺はターナ王国の勇者です ターナ最強の勇者ですよ」


確かに 最強の証 オリハルコン装備だ


「そうですか 無理はしないでくださいね 引くことも大事ですよ それから戦うなら命をかける必要があります」


「それは もちろん わかっていますよ 俺達の強さ見せてあげようぜ 安心して見ていてください」


ハリムさんは仲間に鼓舞し 私に優しく力強く答えてくれた


「まっ ハリムだけだとねっ でも俺達もいるから魔王の1人くらい余裕だね」


勇者ハリムと仲間達は魔王に勝負を挑んだ


「頑張って下さい」


この6人なら魔王をきっと倒してくれる


私はおじいさんの近くに移動することにした


おじいさんが止めに入らないようにするためだ


「ハリム~  ハ ハリムに回復魔法を うっ」


叫び声が聞こえたので振り返ると 勇者が倒れていて 戦士の首が飛んでいた


「きゃっ えっ」


残った4人も一瞬で そして倒れていた勇者の首が斬られた


戦いは一瞬だった


私は呆然と立ち尽くした 声も出なかった


魔王は6人の遺体を炎の魔法で燃やし尽くしアイテムを取り出した


おじいさんは魔王のところに駆け寄って 2人で装備やアイテムを分けているようだ


……


私はこの魔王に勝てるようになるのだろうか……


最強の勇者が一瞬で……


私は立ち上がり剣を振った


諦めてはダメ 強くならないと


「えいっ えいっ えいっ えいっ えいっ」


涙をこらえ 剣を振った



おじいさんが外を指差し何かを言いだした


また誰か来たのかと思ったが誰もいない……


外に行きたいのかな?


私も


「私も 私も 私も行きたいです」


私は手を上げて おじいさんと魔王にアピールした


しかし魔王は首を横に振った


何度も外に行きたとジェスチャーしたが完全に拒否


くそぉ~ 魔王め~ 少しくらいいでしょ 賛成2 反対1なんだから


剣の稽古以外は暇そうにしているくせに


魔王が外に出かけるなんてきいたことないけどさっ……


魔王と言えば 魔王城で待ち構えて 勇者に倒されるのが物語の定番だけど……


たまには出掛けてもいいのに……


道を歩いていたら……魔王が現れた……逃げることは出来ない……


恐ろしい……



城で3人だけの生活が何日も続いた


朝食を済ませて庭に移動していたら 前のほうに人影が見えた


私は走って近寄った


「はじめまして 私はこの城の王女イリスです」


「俺は勇者カグン セメラル王国の勇者だ」


「えっ カグン あの……」


「知ってくれていたかな」


「もちろんです 勇者カグン様の数々の偉業は誰でも知っていますよ」


勇者カグンの名前は何度も聞いたことがある


大盗賊団の壊滅 ダンジョン攻略 ドラゴン退治等々 数え上げたらきりがないくらい


勇者の中でも最強なのかも知れない


カグンが来てくれた


魔王に勝てる


「勇者カグン様 魔王は既にオリハルコン装備の勇者のパーティー2組を倒しています 更にこの城を襲った時にも沢山の勇者を倒していると思います」


「魔王が強いのはわかっている 勝算があるから俺達はきた 恐らく 魔王の手下も何処かにいるのだろ」


「たぶん……しかし姿は見てません 城を襲撃してきたときは 恐ろしい手下を10人見ました たしかお父様は……獅子王とか……エルフとか言っていました」


「獅子王だと ガウのことか」


「すみません 名前までは」


「そうか 獅子王ガウがいる可能性が……それなら 現れる前に魔王を倒すのみ お前ら 最初から全力で行くぞ」


「ご武運を」


私はその場を離れた


魔王と勇者カグンのパーティーの戦いが始まった


「きゃっ」


光ったと思ったら 魔王に雷が落ちた


直後に炎の鳥と氷の鳥が魔王に向かっていき 左右から魔王に直撃した


強い これが勇者カグンと仲間の力 魔王に勝てる


「今のも耐えるか 流石は魔王 ではこれならどうかな 行くぞ」


魔王の足元がいきなり氷つき 勇者と戦士2人が魔王に斬りかかった


しかし魔王の足元の氷は一瞬で溶け 魔王が横に素早く避けた


避けた? いや 吹き飛んだ


「何者 うっ」


いつの間にか おじいさんが勇者カグンを斬りつけていた


「こうも簡単に大道を寸断するとは……何者だ」


「勇者カグン様 そのおじいさんは私達の言葉がわかりません ただ魔王より強いみたいです」


「だな 圧倒的に」


魔王が勇者カグンに近付こうとしたとき おじいさんが魔王に剣を向けて動きを止めさせた


おじいさんはジェスチャーで逃げるように合図を送っているようだ


「勇者カグン様 逃げて下さい おじいさんには殺意がないと思いますが 魔王が命を狙っています」


このままでは 前みたいに必ず魔王がカグン達の首を跳ねるだろう


「逃げて 逃げて下さい そして伝えて下さい この国が魔王に滅ぼされたことを 出来れば私がまだ生きていることを」


私は必死に勇者カグンに訴えた


ようやく 女の人が逃げ出した


「すまない 必ず伝える そして 必ず助けにくる」


勇者カグン達は逃げ出した


しかし見えない壁に……


やはり魔王からは……


おじいさんはそれを見て何か考え込んでいる


その時 魔王が走り出し 勇者達を後ろから斬りつけていった


「だめ~ だめ やめて~」


私は叫んだ


考え事をしていたおじいさんがようやく動き出し止めに入った


しかし勇者の仲間5人が起き上がれない……たぶん……手遅れ……


「きさま~ぁ」


勇者カグンが仲間の女の人を抱きしめ泣き叫んだ


おじいさんが魔王に向こうに行けとジェスチャーしている


魔王はその場を離れた


しばらくしておじいさんも距離をとった


「許さん 許さんぞぉ~っ」


勇者カグンは走って魔王に向かっていった


しかし勇者カグンの攻撃はかわされ……そして……


「ザシュッ」


首が飛んだ


魔王は勇者カグンの攻撃をかわし かわしざまに勇者カグンの首を剣で飛ばした


「そんな……勇者カグン様が……」


私はその場に座り込んだ


魔王は勇者カグン達を炎で燃やし尽くしアイテムを取り出した


魔王を見ると嬉しそうにアイテムを拾っていた


そしておじいさんも何か喜んでいた


この状況で喜ぶなんて おじいさんが戦わなかったら魔王を倒せていたのに


「はぁ~」


ため息しか出てこない


おじいさんを見るとまたポーションを飲んでいた


身体が光……もしかして……少しだけ若くなった?


いや おじいさんにかわりないけど……雰囲気がかわったような気がした


最強の勇者を簡単に倒せるおじいさんって……


おじいさんにこのまま剣を習えば 私も強くなれるかも


あっ 魔王も強くなってるの……

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