第8話 精霊

お腹すいたなぁ


魔王は起きてるけど おじいさんは相変わらず ぐっすり寝ている


お年寄りは朝早いって聞いてたけど……


「えっ」


魔王と目があうと 睨んでいる


私は目をそらす


何 何 何もしてないのに


一緒に生活していても魔王は恐い


睨まれると身体が震える


お おじいさん 早く起きてぇ~


心の中で叫ぶ


チラリと見ると魔王がいつもの真っ黒な装備をして剣を抜いた


「えっ お おじいさん 起きて下さい 魔王が 魔王が」


おじいさんはまったく起きない


私はベットの横においていたオリハルコンの盾を両手で持ち 顔を隠す


魔王を見ると……睨んでいるが……目線の先は私じゃない?


大丈夫かな? 私はベットに座り盾をベットに置いた


オリハルコンの盾は魔法がかかっていて 軽いと習ったけど……私には重すぎて装備出来なかった


盾だけなら両手で持てるけど長時間は無理


「バーンッ」


扉がいきなり開いた


そして6人の男達が部屋に入ってきた


いや すぐ後ろにもう6人いる


2組の勇者のパーティーみたいだ


「君は?」


「私はイリス この城の王女です」


「王女様でしたか ここには魔王だけかい」


「えっ 私と おじいさんが……」


「おじいさんですか」


「はい あそこの膨らんでるベットです まだ寝ています」


「この城の執事か何か?」


「いえ……知らない おじいさんです」


「倒してもいいのか?」


後ろにいた男の人が言ってきた


「えっ 強いですよ たぶん 魔王より ずっと」


「はぁ~ 魔王よりねぇ~ それは魔王が弱いだけじゃ 俺達はグリガリ国の最強の勇者のパーティーなんだけどね」


「でも……」


きっと勝てない おじいさんには……


「まあ 見ていて下さい 行くぞ」


勇者達は寝ているおじいさんに向かっていった


寝込みを 勇者さんって 寝込みを襲うの~


でも 応援しないと 


そうよ こんな チャンスは滅多にない


「が 頑張って下さい」


「ダグラ~っ」


「きさまぁ~」


おじいさんに向かっていったパーティーが叫び出した


見ると勇者が倒れていた 首から血が溢れている


更に 向かっていった仲間も……



「ぐわぁ」


「うっ」


「強すぎる 一旦 逃げよう」


魔王に向かって行った勇者達も……



ドタッ ドタッ


おじいさんに向かっていった勇者達のほうから


「えっ」


魔王のほうを一瞬見ていた間に……おじいさんに向かって行った6人のうち 5人が首から血を流して倒れていた


いつもなら 手加減するのに……


おじいさんは目を擦りながら眠そうな顔をしていた


「許さない 許さないぞ グルガリの秘宝 裁きの精霊よ この爺と魔王を倒せ」


最後に残った男が玉をかかげて叫んだ


裁きの精霊? 精霊?


おじいさんの前に女の人が現れた


召喚魔法? いや召喚の玉なの?


女の人はおじいさんと会話しているように見える



「助けてくれ こんなはずじゃ」


魔王に向かって行ったパーティーの1人の男が逃げ出した


5人は既に……


逃げ出した男は扉を出た辺りで


「なんだ これは 壁が あっ く くるなぁ~」


「ドタッ」


魔王が……


おじいさんのほうを見ると まだ女の人と会話している


女の人が一瞬 後ろの男を見たと思ったら


「ぎゃ~っ」


いきなり雷が男に落ちた


「えっ えっ」


どうなってるの? 精霊はどっちの味方?


今の雷で最後に残っていた男も……亡くなっているようだ


おじいさんと女の人は会話を続けているように見える


もしかして 通訳してくれるかも? おじいさんが何者なのか教えてくれるかも?


……私の勇者だと言われませんように……聞くのが……ちょっと恐い


私はおじいさんと女の人のところに近寄った


「はじめまして イリスといいます」


女の人は 魔王と私を見て驚いている


そりゃ 魔王ですもの


女の人はおじいさんと会話を続けた


会話が終わるまで待ったほうがいいのかな?


しばらくすると 女の人の身体が薄くなり 消えていった


「えっ」


まだ話してないのに 最大のチャンスがぁ~


「パリンっ」


床に転がっていた玉が粉々に


おじいさんの正体がわかると思ったのに


おじいさんが……勇者だと言われなくて よかったのかも知れないけど……



それより……


「トイレに」

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