第5話 墓前に手を


おじいさんが立ち上がりうろうろし出した


徘徊?


王座に近づき


「えっ」


座った


私は立ち上がりおじいさんの近くに駆けつけた


「そこはお父様の……お父様の……」


必死でおじいさんに訴えた


「お父様の……」


涙が溢れてくる


すぐ近くにお父様とお母様の……


涙が止まらない


魔王もこちらにきて 恐ろしい顔をして おじいさんに何かを言っている


おじいさんがジェスチャーで 王座を見るように言ってきた


指を指している王座を見たが……


特にかわったところはない


魔王のほうを見ると 首をかしげていた


王座に何か……


しばらくすると魔王まで ジェスチャーで王座を指差しながら 私に王座を見ろと言っているようなジェスチャーをしてきた


王座に何が……


私には理解出来なかった


泣いている私を見たからなのか 魔王が何か言ったからなのか おじいさんは王座から立ち上がり少し離れて座った


それを見て魔王も離れて座った


私は出来るだけ死体の見えない場所に移動して座った


夜になるまでその場に


しかし食事 トイレ 就寝は3人で移動するしかない


こんな生活……私は泣きながら眠った


次の日も


更に次の日も 特に何もしないで過ごした



お父様 お母様 それに城の兵士達の……そのままには……


私はおじいさんにお願いしてみることにした


ジェスチャーで必死に訴えた


おじいさんはわかってくれたようで 手伝ってくれるみたい


私達が運んでいると魔王が近付いてきて 私達に何か言った後で 次々に死体を消していった


「えっ えっ お父様 お母様は」


お父様 お母様が消えた?


「どこにやったのよ ねぇ ねぇ~てば」


魔王に訴えた


魔王が外を指差しついてこいとジェスチャーした


「何をしたのよ」


私は文句をいいながら おじいさんと一緒についていく


外に出ると 魔王が何か言ってきた


「な 何よ」


すると 魔王が次々に死体を出した


お父様 お母様の……城の兵士達の…… えっ


重なるように積み上げられた


「ちょっと 何するのよ お父様とお母様の上に」


魔王は首をかしげていたが おじいさんは理解してくれたようで 丁寧に移動してくれた


それを見た魔王が再び死体を消して 今度は重ならないように出してくれた


「……ありがとう」


庭の手入れ用の小屋からスコップを3本取りだし おじいさんと魔王に渡した


私が掘り出すと おじいさんも近くで穴を堀始めた


私がまだ少ししか掘れてないのに おじいさんは1つ目を堀終わり兵士の……埋めてくれた


座って見ていた魔王が立ち上がり いきなり地面に穴を開けた


「えっ」


魔法?


次々に穴が開いていく


それを見ていたおじいさんも魔法で穴を開け出した


「凄いっ」


何十もの穴が……


おじいさんが私の横にきて 近くの花を指差した


「お花? 供える花?わかりました 穴はお願いします」


おじいさんと魔王があっという間に穴を堀 全員を埋めてくれた


私はお父様とお母様の墓に花を供え 手をあわせた


「お父様 お母様」


涙が溢れてくる


仇を……魔王を倒したい……でも私には力がない


(イリス すまない)


お父様……


1年前のお父様の言葉を思い出す


「イリス すまない 本当にすまない」


「お父様 頭を上げてください 私なら大丈夫です」


「すまない」


「私は勇者様と結婚します」


「すまない 勇者様を導いてくれ 勇者様も1人の人間だ 正しく導く者が必要なのだ」


「導く者ですか?」


「ああ イリスなら 勇者様を導くことが出来ると信じている」


「お父様」


「強い力を持っていても正しく使わなければ……それにその力を利用しようとする者達 その力に嫉妬する者達 勇者様も悪に染まることがあるのだ」


「勇者様が……悪に……」


「そうだ だからイリスが守ってくれ」


「勇者様を私が守る……」


「イリスに この鍵を渡しておく」


「これは……」


「新たに古文書が見つかった 伝説の勇者すず様の戦いについての……そして……最古の伝説の勇者の……」


「すず様の 見てもいいですか?」


私が1番好きな勇者様 


「いや 今はまだ イリスが勇者様と結婚して何か困ったことになったら見るといい」


「困ったことですか?」


「頼むぞ 勇者様を正しく導いてくれ」


「はい お父様」



……お父様


……お父様 勇者様を



でも おじいさんは無理

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