第8話 試合
東京都予選が始まった。土曜日、うちの高校の体育館で試合が行われる。
「わぁ!本当に黄色いポンポンが!」
一年の部員、牧田隆二が客席を見て奇声を上げた。
「あれ、みんな諸住先輩の応援なのか?」
「俺が知るかよ。」
俺はついナーバスになってそんな風に言ってしまった。先輩たちの熱い想いに応えなければならない。俺にはまだ先があるからと、気を抜いてしまっては申し訳ない。
「ナイスサーブ!ナイスサーブ!フレフレ諸住!イケイケ隼人―!」
本当に、黄色い声援が飛んでいた。そして、同じメンバーが俺の応援もしてくれた!驚き。
「ナイスサーブ!ナイスサーブ!フレフレ荒井!イケイケルーク!」
あ、ありがとうございます。恐縮です。そしてスパイクが決まると、
「キャー!ルークー!!」
と、会場が湧く。今までにこんな経験はなかった。女子が応援してくれるなんて。ちょっと気持ちがいい。諸住先輩がスパイクを決めると、更にキャー!が大きく響く。本当に人気者だったのか。今日は3試合で、無事全勝した。これで決勝トーナメントに入れた。次からは負けたら終わりだ。2週間後にトーナメントが始まる。
「よし。今日はよくやった。次はトーナメント戦に備えて、明日からまたビシバシ行くからな。今日はゆっくり休め。以上!」
橋田先生のお言葉があって、解散になった。確かに今はまだ夕方4時で、これで家に帰れるのは珍しい。それにしても、たくさんのファンがいたけれど、試合が終わるとさーっと帰ってしまって、あれは幻だったのかと思う。そして、俺は本当に幻を見た。一瞬、ギャラリーに柚月さんがいたように感じた。最近会ってないから、とうとう幻を見たか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます