第9話:『太陽』『スカート』『四面楚歌』
あるとき、北風と太陽が言い争いをしていました。
「君よりも私のほうが強いのだ」
「いや、強いのは私だ」
どちらも譲りません。そこで、力比べをすることにしました。道行く若いOLさんのスカートを脱がせたほうが勝ちです。
まずは、北風です。
力いっぱいに風を吹かせて、スカートを吹き飛ばそうとしました。しかし、OLさんがしっかりとスカートを押さえつけていたので、北風は太ももを拝むことすらできませんでした。
「だめだ。諦めたよ」
次は、太陽です。
強い陽射しでOLさんを照らしつけ、辺りをみるみる暑くさせました。しかし、OLさんが日傘とポカリスエットで暑さに耐えたので、太陽はスカートを脱がせることができませんでした。
「汗で透けブラにさせたから私の勝ちだ」
「そんなわけあるかい」
北風と太陽がまたも言い争いを始めます。
するとそこに、女性の地位向上に努めるフェミニストが現れました。
「太古の昔より社会を支えてきたのは女性です」
フェミニストは、OLさんにありがたいエールを送りました。
「あなたには、スカートかパンツスーツかを選べる権利があります」
「ええ」
「だから今すぐパンツスーツに履き変えなさい」
「……え?」
「女性はスカートを履くべきだと押し付ける汚い男社会に、反旗を翻しなさい!」
「ええ!?」
社会のジェンダー意識に特に不満を感じたことのないOLさんは、驚いて何も言えません。当然、スカートを脱ぎませんでした。
「なんなのよ!」
フェミニストの皺がまた一つ増えます。
すると今度は、有名スーツブランドのデザイナーが現れました。
「僕に任せてください」
デザイナーは、OLさんに新作のレディーススーツを贈りました。
「フォーマルなデザインに仕上げました。身体のラインが出にくくなっていますからご安心ください。それでいて通気性が高いので、きっと快適ですよ」
OLさんは早速、試着室で新しいスーツに着替えます。
「これは素敵ですね。ありがとうございます!」
スカートを脱いでパンツスーツ姿になったOLさんは、颯爽とオフィスに向かいました。
こうして、力比べはデザイナーの勝ちとなりました。
本日の教訓。
人を動かしたいときは、相手の希望に寄り添った真摯な態度を示しましょう。
すると、フェミニストたちがぞろぞろと現れました。
「あのねえ、そもそも私たちはスカートを脱がそうだなんて考えてないわけ」
「は、はい。おっしゃる通りで……」
北風と太陽が説教を受けます。
「全ての元凶はあなたたちの男性的な下卑た発想であって――」
「これは世界に蔓延するハラスメントの――」
「極めて野蛮で前時代的な――」
「性的な搾取――」
「MeToo――」
数多の女性ご意見番たちを前に、北風と太陽はすっかり肩身の狭い四面楚歌の状況になってしまいました。大自然が人間を支配していた時代が、終わりを告げたのです。
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感想・振り返り
四面楚歌の使い方合ってるのかな。
せっかく現代風にアレンジしたのだから、現代風にオチを変えたほうがいいのでは(本日の教訓のところ)。
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