第6話:『ツクシ』『革命』『カメラ』
春よ来い。春よ来い。
みんな願っていたし、私も願って歌っていた。でも実際に春を感じられた四月、新しく高校生になった私は、早くも夏を切望していた。あるいは少し前の冬でもいいけれど。ようするに、私はかつて夢描いていたような高校生にはなれなかった。
高校へと続く道に、満開の桜が淡い花弁を揺らしている。道行く新入生たちは、まるで自分の姿を映し重ねるみたいに頭上の桜を見上げている。私はと言うと、視線はほとんど足元へ。降り積もって、踏まれては汚れていく花びらに、やっぱり自分を重ねている。
――良くないなあ。
自覚はしてる。だからため息だってつく。
目を伏せて、周りの声を聞いて、黙っているだけで空気を読んだ気になって。
少し前までは、中学の雰囲気にはまってしまったせいだと思っていた。だからこそ、知っている人のいないこの高校に入れば、心機一転、お喋り大好き友達たくさんの人気者になれるかも! ……っていう、夢を見ていたのでした。おしまい。
――ずっとこのままなのかな。
塞ぎ込みかけた私は、行動に移した。いつもと違う道で登校することにしたのです。知らない人だらけの高校を選んだことに比べると、スケールは落ちる。それでも、私なりの革命、第二弾だ。
私が歩いたのは、通学路を大きく外れた、川沿いの道だった。
そして、真崎先輩に出会った。
「あら? 珍しい」
驕りじゃなければ、たぶん先輩は私に対して言っていた。一眼レフカメラのファインダー越しに、固い戸惑いの表情を浮かべる私の姿を見つける。お互いに何も言わなかった(言えなかった)から、すぐに先輩の興味は元の被写体に映った。ガードレール下に生えるツクシだった。
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感想・振り返り
ツクシはスギナと呼ぶらしい(正しくは、栄養茎をスギナ、胞子茎をツクシ)。
ぼっち主人公を使うと、だいたいプロローグ部分が長くなってオチをつけられずに終えてしまう。
やっぱり女の子を主人公にするなら明るく前向きにしたいところ。
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