第2話:『竜』『エアコン』『逆転勝利』
真夏の炎天下でリバーシに興じていると、ふと疑問に思うことがある。
「新手の罰ゲームみたいです」
大粒の汗の一つが私の額を流れて盤面の黒石に落ちる。ジュッ、と泡立つ間もなく蒸気と消えた。
「フフ、降参は受け付けないよ。私の勝利の一手でもって幕を閉じるのだ」
先輩が三枚の黒石をひっくり返して白に染める。怜悧な瞳が、私に次の一手を問いかける。涼しげな表情で、汗一つかいていない。
「エアコンの効いた部屋で遊びたいんですけど」
「ダメだよ。そうしたら私に勝ち目がないじゃないか。だからわざわざ君に不利なフィールドを選んで戦っているんだよ」
凛とした態度のわりに発言は格好のつかない先輩だった。
「暑くないんですか?」
「私には竜の加護がついているからね。良ければ君も今度、竜神に己の力を示してくるといい」
「リバーシで?」
「腕っぷしに決まっているだろう」
「……この、脳筋」
ぼそりと呟いた言葉は、地面を立ち昇る陽炎にまぎれてしまって先輩の耳には届かないようだった。
さて、頭脳戦は私が先輩の優位に立てる唯一の種目であり、ことに最近の流行りはリバーシなのである。遊びと言えども先輩は向き不向きとか相性だとかの言葉に甘んじる気はないようで、こうして奸計を講じてまで私に勝負を挑んでくる。どこまでも負けず嫌いな性分なのだ。
「勝てる。勝てるぞ」
石をぎゅっと掴んだまま暑さに耐えかねている私を見て、先輩は勝利を確信している。実際、私のミスがいくつかあって、盤面は先輩の有利で進行している。
全く、仕方ない人だ。かつて聖剣を振るって魔王を討伐した英雄が、リバーシまで最強である必要なんてないだろうに。
とは言え、先輩はまだ一つ勘違いをしている。
私は魔王ほど甘くないのだ。
「ここです」
熱気を切り払うように、力強く一手を打つ。危険地帯に飛び込みながら、先輩の有利石を潰す。勝機の天秤は瞬く間に傾いた。
「なっ!?」
逆転勝利。これがあるからリバーシは面白い。
「何度でも。どんな場所でも。先輩には負けませんよ」
結局、私も負けず嫌い。
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感想・振り返り
一行目からお題を入れないようにした。
現代にファンタジー要素が当たり前のように入り込んでいる、みたいな世界観。あと、ほのぼの。
リバーシ(オセロ)で逆転勝利を表現してみたけど微妙に違和感がある。将棋のほうがストレートに伝わるのだろうか?
先輩のキャラがよくわからない。インテリっぽい口調なのに中身は脳筋寄りという設定だからぶれてる。ギャップだとしても、その見せ方がはまってない。
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