オチずとも三題噺
サトスガ
第1話:『ハンドバッグ』・『ダム』・『スポーツカー』
黒部峡谷の雄大な自然に抱かれた黒部ダムを目の当たりにして、僕は息を呑んだ。ダムを観光名所にするなんて世も末だとのたまっていたのはどこの誰か。僕だ。いますぐ殴って説き伏せてやりたい。黒部ダムはいいものぞ。
この感動、ぜひとも他者と
周りで和気藹々としている観光客たちを後目に、僕はスマホを取り出しカメラ機能を起動する。自然を相手に、はい、ピース。いえーい。
――ダムの水面に、スポーツカーが浮いていた。
僕の視線はその一点に吸い寄せられる。
黒い外装の車だ。保護色となっているのか、遠くにあるせいか、よほど目を凝らさないと気づくものではない。しかし、気づいてしまえばもう無視できない。明らかに異様な光景だった。浮力が働いている様子はない。まるで固い地面の上に置かれているかのように、何らかの未知なる現象によって水面で沈黙のホバリングを維持しているのだ。
どうにも理解が追いつかない。最近の車はすごいなあ、と腕でも組みながら感心すればいいのだろうか。すると、
「……始まったわね」
呟く人の姿がすぐ右隣りにあった。
白のワンピースに身を包む、高校生くらいの女の子だ。双眼鏡に目を当て、視線をダムの方へ向けている。僕の憶測が正しければ、その先にはあのスポーツカーがある。彼女は双眼鏡を覗き込んだまま、自身のハンドバッグに片手を忍ばせる。そして取り出したものは、赤いスイッチの一つ付けられた、リモコンのような機器だった。
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感想・振り返り
固有名詞付きの土地・場所が登場すると良さげな雰囲気が生まれる。小説に落とし込むなら風景の描写はもっと必要。
語り手の驚愕の心理を描写するのが難しい。なんか冷めてる感じに見える。
双眼鏡を(に)~に続く動詞がわからなくて、例文検索を利用した。青空文庫の単語検索は有用だと今回知ることができた。結果、「覗く」と「目に当てる」を採用。
クロムクロを思い出しつつ参考にした()話を書いた。
Web小説的な空行の挟み方はこれでいいのだろうか。疑問だ。
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