[2-56] xN rre hLYImLYUmOrO a.u.k.zess quesa/.
詩魔法。
それは詩に乗せて行使する魔法。詩魔法を使う冒険者であれば
詩魔法の効果は歌声(と、場合によっては伴奏)の及ぶ範囲に限定され、効果を持続させるためには術者は歌い続けなければならない。
一般的な魔法と比較するとかなり面倒くさい魔法で、魔法の才能があったからと言って詩魔法の道を選ぶ者は少ない。実際、汎用性には欠けると言えるだろう。
だがそれでも廃れず、戦闘技術として命脈を繋いでいるのには相応の理由がある。
他を置き去りにする抜きんでた
自動演奏される竪琴は魔力を注がれてさらに高らかに鳴く。
竪琴の独奏に限らず、勇壮なオーケストラの演奏すら幻聴するほどだ。詩魔法の行使に伴う力の余波。力の発露である。
月を背負いオズワルドは朗々と歌い始めた。
『愛し白銀の大地に 猛き風が馳せる
奮い立ち 怖れ断ち 我ら闇に灯火掲げん』
『進め!』
『進め!』
『進め!』
『戦神の加護を!!』
他の三人も口々に自らのパートを口ずさむ。
詩魔法は特定の曲と結びつかない。極論すれば戦闘用の
この歌はルネもどこかで聞いた覚えがあった。騎士や兵たちが歌うという戦いの歌のひとつだ。
オズワルドが得意とするのは詩魔法による味方の鼓舞。自ら戦うことはあまり得意としないオズワルドだが、彼の歌声を聞いた兵は二人前三人前の働きをするとの評判だった。
かつてルネが取り憑いていた少女冒険者イリスはオズワルドの力について知っていて、そのためルネもオズワルドが詩魔法を使ってくることは予測していた。
だが、まさか一家で合唱してくるとは思わなかった。複数人で協力して大魔法を行使する儀式魔法のように、頭数が増えただけ強力な詩魔法になっているはずだ。
前衛を務めるハドリーとスティーブがそれぞれの獲物を手に狭い歩廊の上を掛け、ルネに迫った。
――『魅了の邪眼』が効かない……
明らかに目を合わせているはずなのに男たち三人には変化が見られない。
ルネが『魅了』を使うことは既に割れているのだから対策はしているはずだが、何を使って対策しているのかが問題だ。『耐性アクセサリー』は干渉を避けるため、普通は一つしか身につけない。アクセサリー枠を魅了対策に割かせたとしたら他が穴になっているはずだが、どうも詩魔法の方が怪しいという気もする。
「でりゃああああああ!!」
冒険者風の男スティーブはオズワルドの三男で、連邦で冒険者をしているという話だ。
冒険者と山賊の中間みたいな姿をした彼は、ナタのような剣をルネ目がけて叩き付けてくる。付け焼き刃の≪
振り下ろされる刃がルネの肩口に切り込む、刹那。
ルネは己の身体を霧散させた。
「んん!? 消え……」
空を切った刃が霧を引っ掻き、ルネは焼けるような痛みを感じる。
だが怯まず、直後スティーブの背後で身体を再構成。
背後を取ったルネは左手で自分の頭を引っ掴むと、右手に生み出した呪いの赤刃でスティーブを貫いた。デュラハン形態だ。
障子紙のように鎧を貫いた突きは、スティーブの肉体に止められる。
貫いたという感触と、無傷の肉体。
――これが聖獣のダメージ肩代わり……!? でも、聖獣はどこに?
報告にあった聖獣の特殊能力かと思ったが、上空でドッグファイト中のウォッチャーたちが墜落してきたりはしない。
その逡巡は刹那以下。だが、これにハドリーが異常な反応を見せた。
流れるように踵を返しざま、背後に居たルネ目がけて剣を突き出す。
「きゃっ!」
のけぞって突きを躱したルネの胸の上を、美しく装飾された騎士剣が通り過ぎた。ロリ巨乳だったら危なかった。
ハドリーはまるで
立て続けに牽制のような攻撃をハドリーは放ち、ルネはそれを赤刃で受けながら後退する。その間にスティーブは体勢を立て直した。
突き、踏み込み、掬い上げ、払い、叩き付ける。詩魔法の
二本の剣が間断なくルネを襲い赤刃と撃ち合って火花を散らした。いくらかかったのか知らないが上質な剣に上質な魔化を施したようで、赤刃と切り結んでも刃毀れする程度で簡単には折れなかった。
言葉どころかアイコンタクトでの意思疎通すら無く、ふたりは完璧以上のコンビネーションで襲いかかってくる。
感情の動きが変だった。熱が伝わるように、絵の具が混ざり合うように、攻撃に移る際の『敵意』がふたりの間で伝播している。
おそらく詩魔法の力。オズワルドが詩魔法に付与していた【
そして、もうひとり。
「≪
オズワルドと共に離れた場所で待機しているプリシラが神聖魔法を放った。
錫杖の先から放たれた光の束は空中で枝分かれし、幾条もの光の帯となって幾何学的な軌跡を描いて飛翔する。
先程は一緒に歌っていたのに、神聖魔法を使うのに支障はないらしい。あくまでも詩魔法を維持しているのはオズワルドで、他の三人は補助しているだけのようだ。
ルネは身をかがめ、手を突いた。
ヴァンパイアへの形態転換、そして同時に『狼変化』する。
鋭く爪の伸びた手を銀の毛皮が覆う。小さな身体は更に縮み、ルネはだいたい柴犬サイズの銀狼と化した。
「うおぁ、縮んだ!?」
驚きおののくスティーブの股の間を抜け、ルネは歩廊の上を駆ける。≪
――聖獣の血のニオイ……特に強いのは……
狼の姿になったルネは数多のニオイに包まれていた。
アンデッドの腐肉。人の汗。鉄。石。どこかで燃える炎。雪。堀の水。獣の体臭。そして、今ひとつ食欲をそそらない(つまり人族以外の)血のニオイ。
血と臓物のニオイがルネの鼻をくすぐる。
風に乗ってふわりと漂うニオイは、城壁の一部である塔状の建物……側防塔の、矢や魔法を放つためのスリット状の窓『
本来入り口であるはずの場所は、塗りつぶされたように不自然に埋められている。
ルネはモルガナの心に触れてしまった教訓があるため、感情察知の範囲を無闇に広げずかなり絞り込んでいた。何やらモルガナは拘束されてウェサラに移送されているとのことだが、同じように紋を刻んだ者が居ないとも限らないからだ。
そんなわけであくまでも目の前に居る者の攻撃タイミングを探る程度の範囲にしか感情察知を展開していなかったのだが、それでもここまで接近すれば側防塔の中に蠢く感情反応を感知できる。機械的でフラットなAIくさい感情反応を。
――この中に
この城壁は例によって、地脈から魔力を吸い上げて魔法防御力にしている。その一部である側防塔も同じくだ。時折脈打つように、幾何学的な青白い光のラインが走っている。
城壁の中に閉じこもっていればひとまず安全。ダメージ肩代わりの効果範囲は不明だが、聖獣を戦力として考えずただのエキストラライフとして運用するならこの上ない隠し場所だろう。
『我ら戦人 誰がために起つ 運命を踏み砕き』
『『『刻みし時は 史書のひとひら 命の炎燃やして』』』
距離を取ったルネをハドリーとスティーブが追う。さらに間を開けてプリシラが。
オズワルドは朗々と歌いながらミュージカルめいた歩みでやってくる。歌を乱さないためと分かってはいるが戦いの場において少々シュールだ。
追いつかれる前にルネはデュラハンの姿に戻る。
赤刃は生み出さない。代わりにルネは≪
銀嶺の如き美しさの刃は、自ら蒼銀色の光を放つ。
「あれは!」
「魔剣テイラアユル!?」
シエル=テイラの騎士たる者……あるいは騎士の家に生まれた者が、この剣を見間違えはしない。
当代最高の騎士に王家より貸し与えられるシエル=テイラの至宝。魔剣テイラアユル。
第一騎士団長ローレンス・ラインハルトが使っていて、今はルネの手にある剣。
この剣はデタラメな斬れ味とデタラメな頑丈さを誇る。そこにデュラハンとしての生得的な剣技、そして身体能力を乗せれば。
「あああああああっ!」
体重(軽い)を乗せて踏み込んだルネは、渾身の力でテイラアユルをフルスイングした。
蒼銀の光を軌跡として残し、振るわれた刃は……突貫工事で塞がれた側防塔入り口を四角く切り裂く。
「んな馬鹿な!」
背後から驚愕の声。
「ええいっ!」
切り取った壁にルネが前蹴りをかますと、それは建物内に吹き飛んで何かにぶつかる。
覆面に僧服姿の不気味な男たちがスリット状の窓から外に向けて矢を打っている、と思ったのも束の間。
一瞬前まで人の姿だったものが、吐き気を催すほどの聖気を吹き出しながら黄金飾りの白虎へと姿を変えルネに飛びかかってきた。虎型聖獣ことディスジェクター。
もとは四匹詰め込まれていたようだが、うち一匹は人と獣の中間のような不気味な姿で血だまりの中に倒れていた。
手甲のような黄金の爪が迫る。仮面の一部のような黄金の牙が迫る。
三匹の虎。ルネの手には蒼銀の魔剣。
横薙ぎ。牙が折れ口が裂け。
縦斬り。頭を叩き割り。
袈裟懸けに二連。腕が千切れ飛び。
すれ違いざま回し蹴りのように回転し。深々と胴部を両断す。
飛びかかってきたディスジェクター三匹はルネと擦れ違った一瞬に単なる聖気漬けの肉塊と化し、血を撒き散らしながら転がった。
そこに、さらなる聖気を感じる。
「うーぷす」
黄金の仮面を被ったような顔のドラゴンが、ルネの切り取った穴からマズルを突っ込もうとしていた。
喉の奥に輝く青白い光。聖気のブレス。この閉じた側防塔の中に。
――こういう場所は中から外への魔法は通すはず! ≪
狭間の向こうに細く見えた暗闇の空を目がけ、ルネは転移した。
浮遊感。その直後。
「ガアアアアアアア!」
イルミネイターがブレスを放った。
それは側防塔の狭間という狭間から沸騰したヤカンの湯気のように吹きだし夜空を白々明かす。
側防塔の外からそれを見たルネは、落下する前に再度転移し、さっきまで居た側防塔の屋根の上に着地した。
「隙だらけっ!」
頭を穴に突っ込んだままのイルミネイター目がけ、ルネは『堕天の楔』を投じた。
小さな投擲用ナイフは黄金飾りの白竜に触れるなり魔方陣を展開。受肉聖獣を肉体から引き剥がして強制送還する必殺兵器は……
何のダメージも与えられなかった。
「えっ?」
「≪
屋根の上に身を晒したルネ目がけ、流星のように聖気の矢が擲たれる。
修行中だというプリシラは、術士としての技術はおそらく並以下。だが詩魔法の
『流るる血は 炎となり 我が叫びは 嵐となり』
『同胞を 踏み越えて』『退転はなく』『不撓なる』
オズワルドの歌声が響く中、ルネは再び銀しばとなって、テイラアユルをくわえて飛び降りた。
聖気の魔法弾が側防塔の屋根を乱打しベコベコにする。
すぐ下の側防塔から立ち上るのは、聖気のブレスに焼かれた獣の血のニオイだ。
それとはまた違う、吸血鬼の食欲をそそる人としての血のニオイがどこからか湧き立ち漂っている。
――『堕天の楔』の効果を、どっか別の聖獣が引き受けてる?
見回せば、城壁に生えている何本もの側防塔が目に付く。
「……まさかこの城壁の側防塔、全部が動物園になってるわけじゃないよね……?」
あまり考えたくないが、あり得る事だった。
歩廊へ飛び降りるルネの行く先には、先回りしたハドリーとスティーブ。
「来な!」
落ちてくるルネ目がけてスティーブだけが剣を振る。
ルネは直前で霧となり二歩退いた位置に着地。
そこに着地の隙を狙うハドリーが斬りかかり、ルネは≪
次の瞬間にはルネは再びデュラハンの姿になっていた。ただし、頭は切断された首の上に乗せたまま。テイラアユルを構えながら呪いの赤刃を生み出し、左右から斬りかかるハドリーとスティーブを二刀流で同時にいなした。
一合でルネは不利を悟る。力では互角かそれ以上だが、ふたりは剣士としての技も持っている。少なくとも剣技では二対一で戦える相手ではない。
左右から絶妙の時間差を付けて斬り付けてくるハドリーとスティーブ。ルネは二本の剣を手の中で滑らせるようにして打ち合い、身体を半回転させて剣を入れかえ、
「わっ!」
転がり落ちた頭を軽く蹴り上げリフティングした。
そこでルネは首筋(切断済み)の毛が逆立つような寒気を覚える。
――ブレス……!
宙に舞った頭部の見る先、皮膜の翼を羽ばたかせイルミネイターが滞空している。喉の奥には青白い光。
赤刃を消滅させ、空いた手でルネは落ちてきた頭を引っ掴む。≪
強力な
『我ら一振りの剣ぞ!』
『『『嗚呼 鋭くあれ 我が剣よ!』』』
『我が身朽ち果てようと 勝利せん!』
ルネは転移するなり駆けた。
放射状のブレスはルネを追って徐々に仰角を変えていく。背後に迫るブレスから逃げつつ次の側防塔に狙いを定める。
そのルネの行く手を阻むように、ぬうっと白い巨影が立ちはだかった。
城壁をよじ登ってきたもう一匹のイルミネイターだ。側防塔にへばり付くように陣取ったイルミネイターBは、鋭い黄金のかぎ爪を持つ逞しい腕を振りかざし、ルネを牽制しつつ大きく息を吸い込む。
――転移で逃げ切るのは、ちょっと厳しいか……
歩廊から宙に身を投げ出し横っ飛びにイルミネイターBのブレスを躱したルネは、そのまま宙で翼を生やす。
ルネは羽ばたいた。身体を三度は巻けそうな皮膜の翼を広げて夜空を駆けた。
ヴァンパイアの翼は魔法に頼らず空を飛べる……つまり飛びながら魔法を使えるという大きなアドバンテージがある。
吹き上がる聖気のブレスを急旋回で躱しながらルネは呪文を唱えた。
――ダメージを与えても戦力の頭数を減らせない……なら
眼下では、イルミネイターがルネを狙いに来たことでアンデッドの軍勢がフリーになり、城壁に次々と梯子を掛けていた。ハドリーとスティーブは歩廊上を駆け抜け、登ってくるアンデッドを薙ぎ払っては梯子を蹴り倒していく。
そのスティーブをルネは狙う。
「……≪
突きつけたテイラアユルの先から投網のようなエネルギー波が放たれてスティーブを捕らえた。肉体が発揮するあらゆる力を弱め、萎えさせる
そしてそれは、弾かれる。
スティーブの腰のベルトで、飾りの鋲のような小さな何かが砕けた。
――能力低下防止のアクセサリー……!
『耐性アクセサリー』だ。装備者をいわゆる状態異常や特定の属性から身を守るマジックアイテム。
効果を発揮した時に一定の確率で壊れてしまうのだが、ハドリーは即座にどこからか代わりを出して着け直す。
――なるほど、よく作戦を練ってる。
ルネは他人事のように感心していた。
リソースの削り合いになれば最終的にはルネが勝つはず。だがルネは戦闘を長引かせる気はなかった。戦闘が長引くほどにルネの側も被害が増える。市民を適当に材料にした雑兵はいくらでも補充できるが、上位のアンデッドの素材(つまり騎士や強い兵士)は数が限られるのだから、今後を考えればあまり失いたくないところだ。
――向こうのフォーメーションを崩すなら、やっぱり狙うべきは……
空中で方向転換したルネは、虚空を蹴りつけるように急加速した。
――リーダー!
後方に控えるオズワルド目がけて。
『我ら一振りの剣ぞ!』
傍らのプリシラは神聖魔法で歩廊に登ってくるアンデッドを薙ぎ払っていたが、オズワルドがルネの接近に気付いた事でルネの方に錫杖を向ける。
「≪
幾何学的に枝分かれする聖気の弾丸が散弾のように広がってルネを迎え撃った。
だが、今のルネは≪
「≪
ルネから吹き出した魔力がシャボン玉のようにルネを包み込んだ。
ルネ目がけて放たれた光の矢はルネに届くことなく、魔力同士で相殺されて消滅する。そしてルネは正面から聖気の嵐を突っ切った。
『『『嗚呼 気高くあれ 我が剣よ!』』』
そこに、『敵意』が。
オズワルドの心に、攻撃の前兆である『敵意』が鎌首もたげた。
『我が身捧げ 金剛の守護とならん!』
勇ましく歌いながらオズワルドは奇妙な武器を構える。
それは太い筒状の物体に持ち手を付けた何か。
強いていうなら、ピンポン球でも発射しそうな不格好な銃だった。
発射される。何かが。ルネに向かって。球形の。不定形の。透き通った。
つまり何らかの液体、あるいは流体が。
≪
『液体』が飛散する。それは炎となる。
「あ、ぁあっ!?」
炎が霧に絡み付いた。
熱い。
熱い!
ただの熱ではない。アンデッドであるルネの存在を焼き焦がす聖気の力だ。
霧のままでいられずルネは人型に戻り、そして火だるまになった。
発想は火炎放射器に近い。
燃料となるものを撃ちだして空中で着火、炎として標的に浴びせかけるマジックアイテムのようだ。
だが装填されていた油が一味違う。
神殿で聖別を受け聖気を宿した油『聖油』だ。必然的に、そこから生まれる炎は邪悪を滅する『聖火』となる。
ルネは失速し、飛行のコントロールを失った。
辛うじて羽ばたき、城壁を逸れ、火の粉を舞い上げながら真っ逆さまに堀へと墜落した。
リッチたちの魔法によって氷の道をいくつも作られた堀の、冷たい水の中にルネは突っ込んだ。
煙を上げて鎮火し、細かな泡が立つ中をルネは沈んだ。
ゆらめき乱れる水面の向こうに冷たい月が見えた。
未だ聖気の残滓がルネの身体を蝕んでいたが、焼かれた身体に冷たい水が心地よかった。
――敵の戦法は分かった。
身体が軽くなっていく。
焼けた肉体が溶けるように消えていき、骨だけが残る。
焦げて身体にへばり付いていた服の残骸が浮かんで散っていった。
手にするは、真紅の宝石を削り出したような呪いの魔杖。
――これなら……どう?
「≪
骸骨の口から泡と共に言葉を発すると、逆巻く水流によってルネはグンと身体を引っ張られた。
水が昇っていく。堀に橋を架けていた氷が、突き破られて割れ砕ける。
螺旋に渦を巻くように、見えない何かに吸い上げられて、堀の水が立ち上る。ルネはその流れに乗って運ばれていった。
城壁の側面を滑るようにルネは昇っていき、そして視界が開ける。
重力を無視して浮かんだ水に包まれ、城壁より更に高い場所にルネは居た。堀から吸い上げられた大量の水はとぐろを巻く蛇のように集まり、空中に蓄積されていく。
ついにカラッポになったお堀の上。骨だけの身体となったルネは巨大な水球の中に浮かんでいた。
オズワルドたちはそれをただ、驚きに目を見張り見上げることしかできない。
「ライブはこれまで。雨天中止よ。
……【
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