第3話レイフォール学園②

「みんなー、集まったか?実技授業を担当することになったカイルだ。本日よりこの授業ではこの訓練所を使う。今日は基礎魔法の訓練をする。まずは3人一組のグループを作れ」


いかにも訓練所って感じの場所だ。周りには観客席で囲まれている。カイル先生がこの授業の担当になるのか。周りを見ると既に何組か出来上がっていた。多くは友達や兄弟で組んでいるのが見て分かる。


「ハルト、一緒に組もうぜ!」


「うん、でも後1人どうしようか...」


辺りを探してみるが1人になっている人がもうほとんどいない。


「おーい!ハルトー!」


振り向くとそこにはラミエル王女が走ってこちらに向かっていた。


「ねぇ、ハルト。まだ空いてる?」


少し息を切らしていたのか深呼吸をして整えていた。


「あぁ、うん。実は後1人が見つからなくって困ってるんだ」


「それじゃ、私も入っていい?気軽に話してくれるのハルトしかいなくて」


まぁ、王女様と気軽に話せ、という方が難しい。僕だってまだ話すのに少し緊張する。


「それは助かるよ。こちらこそお願いするよ。」


「ありがと!それで...えぇとそちらの方は?」


怪訝そうな顔でグレイの方を見る。


「僕の友人のグレイだよ。」


するとグレイは急に背筋を伸ばし服を整え始めた。


「グレイ・シュナイドです。噂以上に綺麗なの方ですね」


「あら、ありがとう。グレイでいいかな?。ラミエル・ヴェストレアです。ラミエルでいいわ。今日はよろしくね」


ラミエル王女が微笑むとグレイはとても幸せそうな顔で...泣いていた。いや、感動していた。


「そう言えばラミエルおう...ラミエル、前の授業にいなかったみたいだけどどうしたの?」


ホームルームが終わった後教室を出ていったきり戻ってこなかった。


「あぁ...、ちょっとお父様から連絡があって出られなかったのよ」


困った顔で話を返す。なにかあったのかな。あまり触れない方がいいかな。話題を変えようとしたときカイルが、


「よし、全員組んだようだな。それでは実技訓練を行う。その前に魔法の基礎知識の確認だ。」


基本、魔法には大きく6つの属性があり、火、水、木、無、光、そして闇属性だ。無属性は風魔法や召喚魔法などが入る。これらの属性には相性というものがあり、火〈水〈木〈火

であり、光と闇は互いに相性が悪く、無属性は相性がない。また、魔法には適正があり、上位魔法になると、ある程度"適正"が必要とされ、詠唱しても発動しない場合も少なくないが、大抵は1つは適正があると考えられている。


「...という感じだ。これを踏まえて今日は初級魔法の"ショックボルト"の実践を行う。ショックボルトは光属性の魔法だ。今から手本を見せるから皆もそれにならいやってみろ」


"いかづちよ 我にまとい 閃光せよ!"


詠唱を終えるとカイルの手から一直線に向かって電撃が放たれる。放たれた電撃は8メートルほどで消えた。


「これがショックボルトだ。魔力のコントロールがうまければ初級魔法とはいえ10メートルぐらいは打てるようになる。お前らもやってみろ。近いと危ないから離れてやれよー」


カイルの合図と共に散らばった。


「カイル先生結構すごい人なんだな。俺なんてせいぜい3メートルが限界だぜ」


グレイはそういい詠唱を唱えた。確かに4メートルほどで電撃が消えた。簡単に言ってはいるが1年生で3メートルは上出来なほうだ。周りを見渡すが2メートル弱の生徒がほとんどだ。


「ハルトもやってみろよ、前よりかは出来るようになってんじゃねーの?」


「ハルトは魔法苦手なの?」


ラミエルが話しかける。


「そうなんですよ!こいつ昔から魔法が苦手...というより上手く発動しないみたいなんですよ」


「そうなの?でも魔力が少ない...訳

ではないみたいね。なぜかしら」


ラミエルは不思議そうに首をかしげる。この学園はある程度魔力がないと入れない。入ってきた時点で魔力が少ない、という考えは消されるのだ。


「ちょっとやってみてよ!もしかしたら理由わかるかも知れないから」


理由が分かる?どういう意味だろう。


「うん...わかった」


よく分からないが詠唱を唱える。


「"雷よ 我に纏い 閃光せよ!"」


するとハルトのてから電撃が放たれる。しかし1メートル弱で消えてしまった。


「やっぱりだめかー」


ハルトはため息をつく。隣を見るとラミエルがじっと見つめているのが見えた。いや"何か"を視ていた。


「ラミエルってもしかして"魔眼"の持ち主だったりする?」


魔眼。先天性のもので、ごく稀に、眼に特殊な魔力が宿っている人たちが現れる。遠くのものを通常の人より見えたり、身体の内部の魔力の流れを読み取れたりするらしい。魔眼所持者は非常に少ないため、未だに謎が多い。


「うん。私の眼は魔力の流れや魔力量を視ることができるの。それでハルトの魔力の流れを視たんだけど、何て言ったらいいのかしら...途中で何かにき止められてるような感じだったわ。こんなの初めて見たわ」


やっぱりそうか。この止められてるような感じは気のせいではなかったのか。


少し重い空気になりかけたがグレイが口早に


「まぁ、いつか治るさ!それよりラミエルは何メートル位打てる?」


グレイはこういった空気に敏感だ。正直いつも助かっている。ラミエルもグレイの話にのっかる。


「そうね、じゃぁやってみるわ」


ラミエルが詠唱を唱える。すると電撃が6メートルまで放たれて消える。


「うおー、すごいじゃん!5メートル以上いくのって結構大変って聞いたけど」


グレイは興奮気味に話す。でも確かにすごいことだ。1年生で3メートル放つのだって割りと凄いことなのにその倍放てるのは才能がないと出来ないことだ。


「凄いね、6メートルも放てるなんてラミエル位じゃない?でもなんでこのクラスなんだろうね。これくらいできるなら一番上のクラスでもおかしくないと思うんだけど...」


これだけ魔法の才能があれば一番上のクラスでも不思議ではない。まぁグレイは学力だろうなきっと。


「あぁ、ほら私一応皇女じゃない?だから一番上のクラスだと目立って嫌なのよ。それに頭の硬い人たちが沢山いる教室って疲れる気がするし...だからお父様に頼んじゃった」


とラミエルはイタズラ顔をする。なるほどね、そういうことだったのか。


「ラミエルって意外とそういうところあるんだな」


「だね」


グレイの言葉につい同意してしまった。


「...それってどういう意味?」


微笑むラミエル。でも目が笑っていない。


「やべ、逃げるぞ!ハルト!」


授業ということを忘れ、逃げるハルトとグレイ。それを追いかけるラミエル。後日カイル先生に呼び出されたのは言うまでもない。





















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最果ての輪廻~勇者と魔王の物語~ 水城しゅう @shi_ki

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