第10話


 1度目は ある演目で、咲子は3人組の悪魔の1人を演りたがった時。

やっぱり気が合う事に、私も悪魔の1人を希望していた。

台詞も出番も少ないけど、『何かカッコイイよね』って、役を選んだ理由も同じだった。

演技に自信のある咲子は『悪魔は3人いるから一緒に選ばれようね!』と、私に言った。

けれど、オーディションに合格したのは私で、咲子は落とされた。

物凄くガッカリして、露骨に落ち込んだ咲子に与えられた役は、主役だった。


 2度目は、咲子は役者では無く、『大道具を担当したい』と言った時の事だった。

その時の演目が気にくわなくて、演りたい役が無いんだってのが理由だった。

でも、オーディションは全員参加が絶対だったから、咲子が大道具の担当になるのは難しい。

だから、三文芝居に打って出た。


 ソレは『台詞を覚えないでオーディションに参加する』と言うもので、私は咲子の神経を疑った。

そんな事をしたら、流石の咲子でも許されない。

顧問に激怒されて、演劇部を追い出されるかも知れない。

そうまでして配役されたくないのかって、お前なに様だって、無神経にも程があるって……


 でも、私は止めなかった。



(咲子を、生涯の親友だと思ってた……)



 頭の片隅で何度も過ぎってたんだ。

メチャクチャ怒られて、追放されちゃえば良いんだって……

1度くらい失敗すれば良い。

そうすれば、少しは私の気持ちが解かるんじゃないかって……


 それで、咲子の三文芝居がどうなったかって言うと、

予定通り、台詞をロクすっぽ言えずにオーディションを終えて、それでも顧問から怒られる事も無く、


 主役に選ばれました。


 顧問は気づいていたんだと思う。咲子が反発している事に。

でも、咲子は責任感が強かったから、選ばれた以上はボイコットしない。

どんなに気にくわない役でも熱演する。だから、顧問は咲子に主役を与え続けた。

咲子は演劇コンクールでも個人の成績が良くて、審査員から絶賛されて、いつも表彰されていたから

そんな咲子を裏方に回す何て、顧問としは考えられなかったんだと思う。


「皆、褒めてくれてたんだ……知らなかったなぁ、」

「えぇ? そんな事ないでしょぉ、」

「私、嫌われてたから」


 何、気づいてたの? 気づいてて あの態度? どんだけ不屈?


「まぁ、ソレはぁ、嫌われてたとかは、私には分かんないけどぉ、」

「またまたぁ。優菜チャン、気遣ってくれてたじゃないの。

私が1人でいると、いつも話しかけてくれた」

「そう、だった、っけ……?」

「うん。私、なるべく皆を不快にさせないようにって、距離を取らなきゃいけないんだろうなって、色々考えてたから良く覚えてる」

「そうだったの……?」

「うん。皆、私には関わりたく無さそうだったから……

必要な事だけしようって、足を引っ張らないようにしようって。

でも、何をやっても駄目だったように思う。優菜チャンだけ。仲良くしてくれたのは。

すごく嬉しくて、だから、演劇を頑張れた」


 咲子は、何も考えていないんだと思ってた……

嫌われても平気なくらい無神経なんだと……ましてや私の気持ち何か……


「ぁ、……でも、後輩はさ、咲子の事、好きだったじゃん?」

「アハハハ。どうかなぁ」

「そうだって。後輩達とばっかり つるんでた関口サンっていたでしょ?

あの子が【後輩が1番好きな先輩ランキング】ってのを作ってて、ソレをこっそり見せて貰った事がある」

「すごいエグイね、その企画」

「全員、咲子先輩が1番好きだって」

「ソレはソレで不思議すぎる」

「演技が上手い。ソレと、怖い。でも、……優しいって」

「……」


 咲子は呆けていた。

後輩達からの羨望には、流石に気づけなかったみたいだ。

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