第9話 最終話 付箋で繋がる想い
バイトの最終日、みんなにお別れの言葉を言い笑顔で別れた。
牛久や櫻井さんは泣いていた。
本当にありがたい。ここで働けて良かったと心から思う。
ただ、江島だけはあれからほとんど顔も合わさず、バイトも
辞めてしまった。
俺のせいだと知っているだろう牛久は、特に何も言わなかった。
俺は、今まで使っていた机に付箋の答えを書き店を出た。
あいつが見ないであろうとも、返事はしないといけない。
そう思った。
駅へ向かう。もう12月。
既に荷造りは済んである。
明日からは映画会社のある東京へ引っ越しだ。
今まで過ごしてきたこの街もそう考えると感慨深い。
雪が降っており、傘をさす人もいる。
俺はコートのポケットに手を入れ、寒さをしのぎながら歩く。
歩く人の中に赤い傘があった。
俺は特に気にせず、すれ違う。
ガシ!
傘の持ち主が俺のコートの袖を掴む
「おわっ!な、なんですか。俺は何にもしてないですよ」
よく俺は危ないやつに間違われるので、一応下手に出る。
茶色いコートから出た小さな白い手だった。
この手は・・・。
「したじゃないですか。私を泣かせました。立派な犯罪です」
赤い傘の柄が俺に押し付けられる。
そこには俺のよく知る彼女がいた。
いや、本当はまだ知らない事が沢山ある。
付箋には俺に対する質問しかなかったからな。
今度は俺が質問する番だ。
君が何が好きで嫌いか。趣味は何か。休日はどうしてるのか。
好きなタイプはどんなやつか。
こんなゴリラみたいなやつでもいいのか。
「確かにそれは捕まっても文句は言えないな」
「はい、だから私が捕まえます」
笑顔の彼女がいた。
袖を掴んでいた手が、俺の手を握る。
「そういえば、付箋の答えがまだだったな」
俺はそう言って彼女にキスをした。
付箋的恋愛術 白ウサギ @Whiterabbit-cam
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