第6話 桃色の付箋とデートの誘い

あれから一ヶ月。江島との気まずさもなくなり、俺は普段通りに

バイトをこなしていた。


「最近付箋多いですね。先輩の机に貼られまくってますし」

レジ打ちをしながら牛久が俺に言う。


「そうだな、いまだに犯人見つからねぇけどな」

あれから1日置きに付箋が貼られていた。


好きな音楽は?          洋楽、映画に使えるBGM

好きな女の子の髪型は?      似合っていればいい

好きな洋服は?          動きやすい服

タイプな女の子は理系or体育会系? どっちでもいい

お化けは怖い?          怖い

巨乳と美乳どちらがタイプ?    どっちでもいい

動物を飼っていますか?      飼ってない

デートするなら何処がいい?    わからん。任せる。

一番楽しかった事は?       親父と映画に行った事

一番悲しかった事は?       親父が死んだ事

ごめんなさい           気にしてねぇ


「いいじゃないですか。害があるわけでもないし。

 あ、また唐揚げ欲しいって書いてくれませんか」


「くだらねぇ事言ってねぇで仕事しろ」


「はーい。そういえば先輩?」


「あ、なんだよ」

前を向きながら牛久が続ける。


「明日、紙白神社のお祭りありますよね。デートしませんか」


「誰と?」


「私とみさきちゃんと櫻井さんです」


「それはデートなのか?」

俺は思わず牛久を見た。


「あ、私と二人っきりのが良かったですか」


「それはない」

意地の悪い笑みを浮かべた牛久を俺はバッサリ切った。


「ふぐぅ!」

クリーンヒットだったらしい。牛久が呻いた。


「ま、暇だったらな」

バイト時間が終わり俺は一足先に上がる。


「絶対ですからね。午後6時、神社の入り口の前に集合ですからね」

牛久の元気な声が聞こえた。



「ん?」


帰り際、机の上に桃色の付箋が貼ってあった。


浴衣は好きですか?   


「お前は誰なんだよ」


俺は笑いながらYESイエスと付箋に返事をした。


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