第8話 押しかけ弟子、改めて国興しに誘われる
「第四王女、あなたがエルフの血を引く者であるという結論に至った理由は、以上です」
「あなた様の考えはわかりました。到底信じることはできませんが、ひとまずは良しといたしましょう」
種明かしをした俺の顔を不満げな表情で見る王女殿下。
多少端折った部分はあるが、大まかな思考経路はすべて話したのだが、納得いただけなかったようだ。
「私はエルフの血を引いてはいますが、カティアとは違い、半分だけです。人間とエルフのハーフとして、支配下のエルフを縛り付けるための道具でしかありません」
「姫様!?」
「がっ!」
ギチリ、と頭の骨が嫌な音を立てる。
頭を掴んでいるメイドエルフの手に力がこもったからだ。
それほどまでに、今からされる王女殿下の話は重要であるらしい。
「カティア、カールヒェン様の拘束を解いて差し上げなさい。この方は、私たちを害することはありません」
「し、しかし……」
「拘束を解きなさい、カティア。
毅然とした態度で告げる王女殿下の声により、ゆっくりと頭を締め付ける手から力が抜けていく。
そして、たっぷりと時間をかけて、俺の頭は解放された。
「首元のナイフも、です。彼はきっと私たちと一蓮托生の道を歩んでくださいます」
にっこりと表現するのがふさわしい笑みを浮かべる王女殿下の圧力に、メイドエルフも逆らうことなく、首元からナイフを外す。
「よろしいのですか、王女殿下?自分自身で言うことでないですが、そこまで信用されるほどの人物ではないかもしれませんよ」
頭が開放された俺は、ぐるりと首を回したあと、肩を上げ下げしで可動範囲に異常がないことを確認する。
問題ないことを確認したのち、王女殿下を試すような物言いをする。
「信用ではありません。あなた様は自分の好奇心に忠実であるとの信頼ですわ」
王女殿下の物言いに一瞬固まってしまったが、すぐさま笑いがこみあげてくる。
大笑いをする俺に、王女殿下は笑みを浮かべたまま告げる。
「カールヒェン様、改めてお誘い申し上げます。私と一緒に国興しをしませんか?」
「あっはっはっ……ふぅ、失礼いたしました。それでは、どのような国にされたいのか、改めてお教え願います」
笑いを納め、身を乗り出して話を聞く体勢を作る。
そこで聞いた王女殿下の話はこうだ。
住み慣れた世界樹周辺の土地を王国に抑えられてしまったエルフは、族長の娘を含む幾人もの年若いエルフを人質に取られた。
人質に取られたエルフたちは、魔術に長け、不老長寿の特性を利用され、各地の戦争や開拓で使われている。
第四王女ではなく、騎士団の一人として各地の救援に向かった際、エルフたちの実情を聞かされたそうだ。
エルフの血を引く者の中で、一番自由に行動できる身分を利用し、エルフを再び独立させることを決意する。
その際、帝国側に支配されたドワーフ族や、各地で迫害されている獣人をはじめとする亜人たち、人間の国でつまはじきにされたり評価されていない人間たちも巻き込んだほうがよいと賢者からアドバイスを得た。
アドバイスと合わせ、押しかけ弟子である俺を派遣することを約束。
そして、今に至る、というわけだ。
「なるほど。王女殿下の考えはわかりました。クソ賢者の思惑に乗るのもしゃくですが、王女が考える国を興すため、微力ながら尽力いたしましょう」
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