第7話 押しかけ弟子、種明かしをする (その2)
「は、話を戻しましょう。騎士団とともに行動する王族のどこが珍しいのですか?過去、幾人もの王族が騎士団長になっていますわ」
コホン、と可愛らしい咳払いをした王女殿下が話の続きを求めてくる。
「騎士団長になった王族の方々は、王位継承権がないに等しい方々ばかりです。剣術や魔術の才能がある方であっても、王位継承権の順位が高い方は政への関わりのほうが強かったのですよ」
首を振ろうとしてピクリとも動かない。
がっちりとメイドエルフのカティアさんに掴まれたままだったことを思い出した。
「さて、第四王女殿下。姫騎士としての評価や実績を鑑みるに、あなたには剣術の才能がおありのようだ。そして王位継承権は第十位。低くはあるが、これまで騎士団長になった王族の方々と比べればはるかに高い順位をお持ちです」
両手のひらを開き、指を十本見せる。
頭を掴まれ、首元にナイフを押し付けられているにもかかわらず、にこやかな笑みを浮かべる俺に、王女殿下は椅子の上でわずかに後ずさりをする。
「どんなに才能があったとしても、王位継承権が第十位であれば、騎士団とここまで懇意にすることはできません。王や側近たちから、止められてしまいます」
困ったような表情を作り、腕を交差させて×印を作って見せる。
「……たしかに、私は周囲の者から止められておりません。あなた様がおっしゃっていたときとは、状況が異なるのではないでしょうか」
王女殿下が反論を口にする。
首を左右に振りたいが、頭を掴まれたままので、手を左右に振る。
「いいえ、何も変わっていませんよ。あなたの前に剣術の才能があると認められた方の王位継承権は、第十五位でした。王位継承権があまり高くないことから、次期騎士団長と目されておりました。しかし、当時の王により騎士団を離脱させられ、今は王国直轄地にて、代官を務めております」
「あっ……」
俺が言わんとすることに気づいた王女殿下は、両手を口元に当てる。
王国直轄地の代官は多いが、王族は一人しかいない。
現王の従兄弟であり、第四王女殿下が騎士団に入る際、後押しをした公爵のことだ。
「その状況を、現王は当然のことであるとして、ただ見ていらっしゃいました。ですので、状況は当時と何も変わっていません」
一度言葉を切る。
身を乗り出したかったのだが、メイドエルフがそれを許さない。
「だからこそ、第十五位の王位継承権を持つ方が止めさせられたことを、第十位の王位継承権を持つあなたが続けられていることが、第二のきっかけになりました」
王女殿下の反応はない。
「そして、第三のきっかけは、あなたの母君の幽閉です。国家反逆罪として訴えられながらも、王城の北塔に幽閉された状態のまま処分保留となっていることです。この三つのきっかけに加え、今も俺の頭を押さえ続けているメイドがエルフであることから、あなたがエルフの血を引くものではないか、という結論に至ったというわけです」
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