Op.7 演劇
アルテシア王国の王城前広場に、数えきれないほどの人々が参集していた。
王城から張り出した演台で車椅子に腰を預けていたカムラが、それら人々に向けて女神マルクトを紹介すると告げた。
カムラの言葉に促されたミコトは、宝飾に彩られた祭服の裾を引きずりながら、緊張した面持ちで演台に進み出る。
最中。
「
驚いて逃げ惑う人々を避けながら、シタンの乗る
横薙ぎに銃剣の刃を振るうサージェントプラナス。しかし
対して演台の縁に進み出たミコトは、泰然を装いながら、手に持った杖を
同時。
暫しの静寂の後、一連の事態を目にした人々から、女神を讃える割れんばかりの歓声が上がった。
◆
石造りの格納庫で、二樹の
一樹はシタンの乗樹であるサージェントプラナス、もう一樹は
細長い板材が複雑に組み合わさったような独特で優美なフレーム構造を持ち、そのフレームを稼動させるエネルギーとして、光合成によって生成された水素が用いられる。損傷については自己修復されるが、窒素化合物などを効率的に取り込むためにフレームの一部を土中に埋めなければならない。
背中には三つの瘤状の突起が水平に並んでおり、中央に水と水素を、左右に
胸部には、全天周型ディスプレイを備えたコックピットがある。コックピットは、ハッチの解放時を除いて粘性の高い樹液の中に浮かんだ状態にあり、搭乗者に伝わる振動や衝撃の緩和を実現している。また搭乗者の体内における電位の変化をモニタリングし、それをフレームに反映させることによって、直感的で遅延の少ない操縦を可能にしている。
発掘される
「詐欺です……詐欺行為に荷担してしまいました……」
恥ずかしさと罪悪感に苛まれながら、ミコトは二樹の
見事な演技だったと賞賛するカムラに対し、ミコトは人々を欺くような真似をしてしまって大丈夫なのかと問い質した。そんなミコトに対し、カムラはアルテシア王国が置かれている状況を語る。
各地で発掘されるアース文明の遺物が、ユグドラシルにおける科学技術の発展に大きく寄与していること。隣国のシュタール連邦共和国が、アース文明の大規模遺跡を多数抱えるアルテシア王国の実効支配を、長年に渡って画策していること。そしてシュタール連邦共和国によるアルテシア王国の実効支配を受け入れた場合、シュタール連邦共和国の大幅な軍事力の強化を危惧する第三国の介入によって、アルテシア王国全土は戦場になるだろうこと。
「先日の評議会でも現状を打開する妙案は、残念ながら形にならなかった。そこに現れたのが、君というわけだ。無論、君が本物の女神でないのであれば、時間稼ぎにしかならないだろう。しかし、その時間稼ぎにすら縋らなければならないのが、今の我々だ」
カムラが言葉を切ると同時に、シタンが切迫した様子で駆け込んで来る。
「兄上! シュタールが!」
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