第3章 (4)到 達 Part①
■◇■〔航行日誌〕惑星暦3039年130日 ログイン ⇒
宇宙船シルバーファルコム号は、強大なCosmic Waveの影響でメインエンジンである反重力システムが、再起動しないままだった。そのため補助エンジンだけでの航行を
しかし、科学技術の粋を集めて建造された銀河一の新型宇宙船は、他に大きなトラブルもなく、安定した宇宙航行を続けた。名は体を表すと言われるが、怪物宇宙ファルコンの威力を実感することができた。
そして無事に、『水の星』の軌道に到達した。
未知なる惑星は、宇宙船の円窓越しに肉眼でも見え始めた。クルーたちは一人の例外もなく、青く輝く魅惑の星に
===以上、ログアウト □◆□
「ウォー、何という青さだ!」
宇宙船が惑星の周回軌道に入った途端、ジーンは歓喜の声を上げてしまった。
「これこそ、
普段は人一倍冷静なサームが、細い頬を膨らませて珍しく興奮している。
まるで連鎖反応のように、アーンが、ビーオが、ミカリーナが、そしてローンの歓声がつづいた。
「これは、まさに約束の星よ!」
「すっごい! 渦巻く白い雲まで生きてるう?」
「まるで、宇宙のオアシスね?」
「うわぁー、伝説の星は、ホンマやったんやー!」
クルー達の歓喜の声が、次つぎに船内を飛び交い。あ互いに共感し合っていた。
長期間の高速航行を続けていた宇宙船もここで小休止だ。水の星の周回軌道をゆっくり飛びながら、初めて見る新惑星のデータ収集に入ることになる。
「エンジン停止。しばらくこの高度で、軌道を維持しよう。アーン、オートドライブの設定を頼む。……現在のクルージング・スピードを維持してくれ」
ジーンは、キャプテンシートに戻ると指示を出した。
「了解! キャプテン。現在、赤道上空、高度800km。電離層外軌道を維持します。オートドライブ、セットオン」
隣席のアーンは、コックピットの操作パネルを撫でるように設定している。すっかり慣れた手つきにジーンは感心した。
続いて惑星データの収集を開始する。いよいよピーモの出番だ。
「ピーモ頼んだぞ、しっかり採ってくれよ。安全第一で、着陸したいんだからな」
「リョウカイ! ジーン」ピーモはいつものように目をクルクル回して応答した。
ピーモは
「ワクセイヒトツノ、データブンセキクライ、LOQCS-02ノ、リョウシカイロナラ、カンタンダヨン」
「それは頼もしいなぁ? ピーモ。しっかり頼んだよ」
「オウケイ! ジーン」
ジーンは、操縦席から立ち上がると、OPEルームをぐるりと見渡した。
「それではみんな、暫らく自由にしていいぞ。データ分析が済むまで、この素晴らしい水の星を、じっくり眺めることにしよう」
クルー達へのねぎらいの意を込めて、ジーンは指示を出した。
「ナイスだねぇ! キャプテン。そうこなくちゃ!!」
ビーオとローンが口をそろえた。
「ただし、自分の持ち場は離れないでな!」
「了解、キャップ。……ワテは、ダイニングのデカ窓から眺めるよ。あそこなら眺めは最高や。ビーオも来んか?」
「遠慮するよ! ローンは、いつものスナック、ボリボリだろ?……ボクは静かに、惑星の美しさを
「へへぇっ? ビーオ君。独りじゃおまえんやろ?……。まー、医療班同士仲ような」
ローンの冷やかしに、ビーオは照れ笑いを隠している様子だ。
すると案の定、背を向けた途端にウィーナの手を引き、医療班の定位置であるMEDルームへと足早に去った。
一方、OPEルームの右奥にあるレーダー操作パネルの脇で、長身の男が黙って惑星に見惚れていた。そこにアーンが、静かに近寄り肩を並べて座った。
レーダー・スクリーンの隣に慎ましく開けられた楕円形の窓越しに、二人は短い言葉を交わした。
「とってもステキな星よね。サーム♪」
「そうだね。君もじっくり堪能したまえ。あの青さを」
「ハイ! サーム♪」
普段は男勝りに見えるアーンだが、密かにサームを慕っているようだ。サームに対して時々見せる女らしい仕草に、ジーンはなんとなく感じていた。でもアーンは気持ちを素直に伝えられない。一方、サームといえば研究一筋の硬派な男。彼女の気持ちなど察するはずもない。
このときジーンは思った。いつも歯がゆい二人だが、余計なおせっかいはやめておこうと。運命の二人であるならば、いつの日か結ばれる時が、きっと訪れるはずだ。
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