第2章 (11)天変地異

☆いよいよ各地で異変が――――――

 巨大な天体同士の重力干渉・・・・が影響してきた。悪魔の所業しょぎょうは益々酷くなってきたのである。


 大気圧の異常な変化による突風や強い雷雨。

 異常な海面上昇で、海岸付近の低地は浸水、河川の氾濫はんらん

 休火山とされていた山々が、突如の噴火。

 崖崩れや小規模な地震の発生と、度重たびかさなるその余震。


 更には、惑星自慢の『惑星環境の人工コントロール装置』にも、狂いが生じてきた。イベントでもないのに突然の人工雪が降り、人工稲妻までもが発生する。



☆やがて各地で人々の混乱が――――――

 家をつぶされた人々が、巣をなくしたありのように逃げ惑う。

 洪水の泥流の中に、沢山のモビルポッドが、木の葉のように流される。

 街に降り注ぐ火山弾や火山灰が、退避する人々の行く手を塞ぐ。

 停電で寒さに震える人山が、砂丘のように膨れ上がった。



☆そして――――――

 とうとう交通機関まで止まってしまった。

 開業以来一つの事故も故障もなかったサンダー・トレインの運行中止から始まった。

 首都の新交通システム動く歩道は、動かないただの歩行者専用道路になってしまった。

 道路網も寸断され、沢山のモビルポッドは、数珠つなぎの長蛇の列となった。



☆そこで政府の執った対応は――――――

《こちらは、惑星連邦共和国情報局です。

 国民の皆さん、冷静を保ってください。

 彗星の引力の影響が出ていますが、今ところ心配はありません。

 科学庁が詳しい状況を調査中です。政府の正式な発表をお待ちください。

 大勢で慌てるとパニックを引き起こします。落ち着いて行動してください。

 屋外は危険を伴います。只今より、屋内退避おくないたいひ勧告かんこくします。

 政府の指示があるまで待機してください。

 こちらは、惑星連邦共和国情報局です。》

 

 こんな防災無線放送を垂れ流すだけで、政府は如何にも逃げ腰な対応。いや、逃げると言うより、これは誤魔化ごまかしだ。政府は、国民の大パニックを恐れて真実を隠している。巨大彗星の超最接近についての情報は、政府も極秘に掴んでいるようだ。


「大統領を出せ!」との声も上がるなか、スタイン大統領の姿が見当たらない。案の定あんのじょう、政府の要人たちは、緊急対策本部が置かれたホットアイライドの地下シェルターに逃れていた。


 惑星随一の観光スポットの島は、表向きは古いリゾート施設の遺跡になっているが、その地下深くは政府の秘密基地だった。


     * * *


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