第16話:オペレーション アイアン・ストーム(2) V0.0

_エルナン・コルテス級超大型戦艦後方に展開する上陸部隊、指揮艦艇マヌエル・アサーニャ級強襲揚陸艦の艦隊作戦指揮センター



 「エルナン・コルテス級超大型戦艦から通信!『艦砲射撃終了、我敵工業地帯ニ向カウ』とのことです!」


 エルナン・コルテス級超大型戦艦からの報告をキャッチした無線要員の声が艦隊作戦指揮センターに響く。


 「よしきた!全艦上陸部隊を出せ!敵の援軍が到着する前に迅速に海岸を確保しろ!」


 『了解!』


 「我が艦からも上陸部隊満載のLCACとヘリボーン部隊を急いで出せ!遅れるな!」



_上陸部隊の1つ、第四海兵隊第1小隊視点


 「全員急げ!早く乗れ!出遅れるな!」

 

 ウェルドッグの上から海兵隊指揮官がうるさく言う。その声に呼応するかのごとくスピードで海兵隊達は既に出撃準備を終え4両の武装型ラッピード装甲車を積み込んだLCACへと乗り込む。


 「よし、全員乗ったな!海水注水後スターンゲートを開放しろ!」


 指揮官がデッキ科員に言う。


 「了解!海水注入開始します!」


 デッキ科員の合図と共にウェルドックに海水が注がれあっという間にウェルドックは海水でいっぱいになる。


 「海水注入終了!スターンゲート開放します!」


 デッキ科員の合図でスターンゲートがサイレンのけたましい音と共に開放、艦後方の本物の海が露わになる。


 「よし!LCAC部隊出撃!後続の遠征戦闘車EFVも出遅れるなよ!今回は時間が命だ!」


 指揮官の号令と共にLCACに搭載された2基のシュラウドに包まれた巨大な推進用プロペラが轟音を立てながら動き出す。


 『LCAC部隊出撃!』


 その合図で2機のLCACはウェルドックから放たれ海へと排出される。轟音を立てながら稼働する推進用プロペラ2基の方向舵はすぐに船体を海岸へと向け、俺たちの乗るLCACは最大速力でそこへ向かう。


 『目標地点到達まで2分』


 激しい波飛沫から乗員を守るために設けられた船室内に無機質な声のアナウンスが流れる。


 「なぁヒューゴ、聞いたか?今回の敵は中世の軍隊らしいぜ」


 隣に立つ同僚のモハヌドが話しかけてきた。


 「そうらしいな。一体全体俺たちの住んでいる国で何が起こってるのか俺たち海兵隊にはわからないが、これだけは言える」


 そう言って愛銃のDm-Depredador12.7を触る。


 「こいつが守ってくれるさ」


 『目標地点到達まで1分』


 船室内に無機質なアナウンス音が響く。


 「あぁ、それもそうだな」


 「・・・さて、そろそろ上陸だ。こんな話はしてないで戦闘に備えるぞ」


 「おう」


 『目標地点到達まで10、9、8、7、6、5、4、3、2、1』


 無機質なアナウンスのカウントダウン終了と共に、砂浜への上陸の際に出る大きな衝撃がLCACに伝わる。


 『上陸完了』


_ダーダネルス帝国領、西端のロング・ビーチに展開する警備隊



 「な、なんなんだあれは!?」


 防御陣地の隙間から敵の動向を探っていた兵士達は自分の目を疑った。自分たちの見てきた船とは形が全く違う、幾つもの船のようなもの。会場を浮いて航行しているように見えるそれの中央にはおそらく敵の兵器であろうものが積まれている。


 「あ、あんなものに俺たちは勝てるのか・・・?」


 隙間から敵情を見ていた兵士の一人の疑問が口からこぼれた。密集して兵を展開していたことが仇となり既にエルナン・コルテス級超巨大戦艦の艦砲射撃により2000名もの警備隊が失われている。しかも上陸部隊からの攻撃ではなく、ただの船に、だ。


 「お、おい!来るぞ!」


 観測員が告げる。再度兵士達が隙間を覗き込む。すると先ほどの船のようなものが海岸に向かって一切スピードを落とさず向かってきているのが見えた。


 「お、おい。あれ陸に乗り上げるんじゃないか?」


 兵士が言う。


 「そんなことして・・・大丈夫なのか?」


 そう言っている間にもその船のようなものは海岸へと近づく。そして・・・


 「あぁ!乗り上げやがった!」


 その船のようなものは海岸へと乗り上げる。おそらくかなり損傷を受けているだろう。


 「・・・ん?」


 何か様子が変だ。普通乗り上げたら慌てふためくはず。だが答えは一瞬で現れる。


 「!!」


 船の正面にあるいたのようなものが動き出した。


 「で、伝令兵!司令官に報告しろ!敵が上陸して来るぞ!」



_上陸部隊の一人、第四海兵隊第1小隊視点



 「よしきた!お前ら、絶対に離れ離れになるなよ!」


 小隊長が船室の外へと通じるドアを勢いよく開けて言う。


 「わかってますって。俺たちは子供じゃないんだから。」


 そう言って駆け足で外へと出る。


 「お、装甲車君の動きが今回早いな」


 分隊長がLCACの昇降ランプから現在進行形で降りているラッピード装甲車を見ながら言う。空には強襲揚陸艦から放たれた輸送ヘリや攻撃ヘリが飛び交い、地上には合計10機ものLCACから放たれた多数の兵士やラッピード装甲車が跋扈している。


 「さぁ、俺たちの任務は敵陣地の制圧だ!航空支援もある。行くぞ!」


 『応!』


 兵士達は小隊長に続きLCACから降りて海岸を疾走する。隊員の一人が適当なくぼみを見つけると無線から小隊は一旦そこで待機するように指示された。


 「・・・了解」


 「次はどうするんです?」


 隊員が小隊長に聞く。


 「俺たち第1小隊の任務はこのまままっすぐ言ったところにあるであろう敵陣地の制圧だ。忘れるな。敵は近接戦のプロフェッショナルだ。近接戦はせずに遠〜中距離から攻撃しろ」


 『了解!』


 防御陣地制圧が今、始まるのであった。

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