第15話:オペレーション アイアン・ストーム(1) V0.0

_ダーダネルス帝国領、西端のロング・ビーチに展開する警備隊



「さ、さっきの轟音は何だっ!?」


 敵からの攻撃に備え忙しなく動いていた兵士がおびえた様子で言う。


 「さっきのはただのこけおどしに過ぎぬ!みな気にせ」


 司令官がそう言った瞬間だった。


ヒュゥゥゥルルルルルルルル・・・ドォォォォォォォォォォォォォォォォン!


 「うわぁぁぁぁっ!」


 何かの激しい爆音とともに爆風が森を襲う。木々は爆風でしなり、その辺りに散らばっていた雑用品や兵士達はそのあまりにも大きな爆風に抗えず、次々とあらぬ方向へ吹っ飛ばされる。


 「な、何があったんだっ!?」


 爆風がやってきた方向を見ると、空に向かってモウモウと黒い煙が上がっているのが確認できた。


 「あっちだ!」


 いち早く事態に気づいた兵士についていき、煙が上がる場所へと向かう。


 「こ・・・これは・・・一体・・・何があったんだッ!?」


 思わず声を漏らす。そこに広がっていたのは、地獄だった。人のものであろう血肉が辺りに散らばり、爆発が起こった原因であろう場所には巨大なクレーターができている。森はそのあまりの爆炎で燃え、これでは欺瞞工作をしていた陣地は全く意味を成さない。


 「ってそれどころじゃない!これは敵だ!早く配置に」


 ゴゴォォォォォォォォン!ゴゴォォォォォォォォン!


 またしても死の轟音が鳴り響く。


 「っ!また来るぞぉ!全員伏せろぉ!」


 司令官が叫ぶ。その命令を兵士達は聞き逃すことなく一斉に伏せる。それと同時に


ヒュゥゥゥルルルルルルルル・・・ドドドドォォォォォォォォォォォォォン!


 再度あの巨大な爆発が、今度は4つ周りに発生し、巨大な爆発とともに爆風も兵士達を襲う。


 「い、いったいどうなってんだぁっ!?」


 兵士の一人が叫ぶ。すると森の中から服がボロボロの兵士が現れた。


 「蟲舎と竜舎が、やられ・・・」


 その男はそう言いかけ倒れる。


 「・・・魔導師!魔導師はどこだ!?」


 辺りを見渡すが、魔導師はどこにもいない。


 「魔導師を呼べ!今すぐ帝都に知らさなければならない!」


 司令官は必死に魔導師を探し出すが、どこにもいない。


 「く、くそっ!魔導師がいない以上今すべきなのは敵上陸部隊の迎撃だ!総員持ち場につけ!すぐに敵はやってくるぞ!」


 『了解!』


 兵士たちは意外にも早く我に戻り、それぞれの仕事を再開する。


 「再度あの攻撃を防ぐ方法がない以上撤退も検討しなければ・・・」


 司令官はこれからのことを考える。何とか生き残るために。



_エルナン・コルテス級超大型戦艦のブリッジ



 「やはり敵が森に防御陣地を作っているので戦果確認が困難ですね・・・」


 副艦長が双眼鏡で着弾地点を見ながら言う。


 「せめて相手がもう少し戦果確認のしやすい場所に防御陣地を作ってくれると助かったんだが・・・。まぁいい。後1回砲撃をした後は上陸部隊に任せるか」


 「了解しました」


 『榴弾装填完了しました!』


 砲塔要員からの報告がブリッジに伝わる。


 「よし、第2射、撃ぇっ!」


 ゴゴォォォォォォォォン!ゴゴォォォォォォォォン!


 その掛け声と共に前部の第一第二砲塔の51センチ連装砲から巨大な爆炎と爆音と共に4発の巨大な榴弾が放たれる。


 「さて、次は目に見える戦果を頼むぞ・・・」



_ダーダネルス帝国領、西端のロング・ビーチに展開する警備隊



 「また来るぞぉぉぉっ!」


 誰かが叫ぶ。それと同時に戦闘準備に入っていた兵士は皆一斉に伏せる。


 ヒュゥゥゥルルルルルルルル・・・ドドドドォォォォォォォォォォォォォン!


 笛の音にも似た風切り音と共に、敵船の放った攻撃が着弾。一瞬で辺り一面に爆発が起こる。それに巻き込まれたものは一瞬で息絶え、物言わぬ死体となる。


 「く、くそぉっ!敵が上陸してきたら絶対・・・絶対に一矢報いてやる!」


 帝国兵は、そう誓うのだった。



_エルナン・コルテス級超大型戦艦のブリッジ


 「敵戦力の撃滅確認・・・ならず」


 副艦長が告げる。


 「結局確認はできないか・・・。これ以上の砲撃は無用だ。上陸部隊へ上陸可能と伝えろ!我が艦は次の目的地、北部敵工業地帯へと向かうぞ!艦、微速。船首回頭右15度!」


 『了解!』


 エルナン・コルテス級超大型戦艦は敵工業地帯へと単艦で向かうのだった。

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