裏表少年と笛吹き死神 第7話 (あんかけ 作)
……最近、ずっと死神さんが攻撃を仕掛けてこない……気がする。
逆に怪しい。
なら、次来た時、こっちからちょっと仕掛けてやろうか。
大丈夫だって!ちょっとだけですからさ!
えぇっと、童話集、童話集……
あったあった。
僕の部屋の本棚にある、童話集。
ここに載ってた気がするんだ。
ハーメルンの笛吹き男。
死神さんを待つのに暇だから、このお話、もう一度読んでみよっと。
今来てもすぐに本を隠せるように僕のベッドの布団の中で見ようかな……。
よいしょ……っと。
うん……
ネズミが大量発生したところに……
笛吹き男が来て……
笛の音でネズミ駆除は成功したけど……
報酬は貰えなかったから……
仕返しに、笛でその街の子供達をつれて、笛吹き男は……
「少年ー?」
はっ!?
死神さん今来たの!?
タイミングわっるぅ!
れ、冷静になれ僕。
こういう時の為に布団に隠れてたんだから。
上半身だけ布団から出して、本は布団に隠して……
「し、死神さん!ごめんなさい、寝てました!」
「あ、ごめんなさい!起こしちゃいましたか?」
いやぁ、ウソで相手を心配させるのって、ちょっと楽しいですねぇ……。
「大丈夫です、心配しないで下さいな~」
「なら良かっ……た……?あれぇ……?」
「そっちこそどうしたんですか、死神さん」
おや?
そろそろ気付き始めたみたいですねぇ?
「……この家、もしかして……」
「もしかして……何ですか……?」
「……いや、気のせいかな……」
ふふふ、どこにあるかも分からない"アレ"に苦しむがいいです。
「やっぱり……何かありますか?正直に言って下さい。いくら少年でもウソをついたら悪い子ですよ……」
「何のことでしょう……」
ってか僕ウソばっかついてるんですけど……。
「……待って……本当に何かない……?隠してないで……早く言えよ……。」
し、死神さんが敬語忘れてるのとか初めてだけど?
でも全然ビビってないし?
こっちには"アレ"があるんで?
「……まさか、少年……この家に盛り塩、置いた……?」
あーあ。
バレちゃいましたか。
と、言いたいところだけど……
「あっ!それですか!ごめんなさい……何も知らないお母さんが置いちゃって」
「はぁ……上級の死神は盛り塩くらいでは弱らないけど、やっぱりちょっと苦手なんですよねぇ……。気分が悪くなるというか……。」
「ああ、ごめんなさい!次、死神さんが来る時までに撤去します!」
「頼みますよ……?」
今回、初めて僕の前でガチ切れした死神さん。
でも、僕は負けませんよ。
「クラクラしてきたので今日はこれで……。」
「あっ……本当に、申し訳ありませんでした……。」
「……大丈夫ですよ」
フラフラしながら飛んでいく死神さん。
……今日、初めて、勝った……のかな。
「はぁ……はぁ……盛り塩だなんて……」
ここまで逃げてくれば安心でしょうか……。
新鮮な空気はおいしいです……。
少年のお母さん……か。
勘弁して下さいよ、ホント。
……少年が盛り塩を置いた可能性?
なくはないけれど、あの時は盛り塩のせいで感覚が鈍っていましたからね……。
少年の言ったことの真偽は不明です。
ま、次に僕が行く時には撤去されてるでしょうね。
少年もそこまでバカじゃないはずです。
次はまた、ゲームでもして遊びましょ?
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