裏表少年と笛吹き死神 第2話 (平城山松前 作)

僕はこれまで生きてきたなかで「神」と自称する人に何度も会ってきた。そのほとんどが目立ちたがり屋で見栄を張りたいからという理由だろう。だから自分のことを「神」と呼んでいる人をこれまで軽視してきた。

今回だって何ら変わりはない。ただ相手が『本当の死神』に変わっただけだ。あいつはオーラが違う。親友を守らなければ…


じゃあなぜ友達はあの死神に「悪い人」認定を受けてしまったのか。それは彼の境遇に由来する。

彼は昔から貧しいが、一度貧しいことを皆に言った時から無視され始めたのだ。よく言う「仲間はずれ」や「いじめ」である。また満足いくほど食べることができないため力が弱く、周りの強い子達に狙われてきた。

しかし彼はとあることをきっかけにして「いじめっ子キャラ」を抜け出せたのだ。

進級しクラスメンバーが一新したところで自己紹介の時にキレやすいイメージを皆に植えつけたのだ。ただ皆に「貧乏だ」ということを忘れてもらいたかっただけである。しかしこれも立派な『ウソ』。だが『嘘も方便』ということわざもあるようにこの時は使わざるを得なかった。栄養不足の上傷も毎日のように怪我を負わされるのでいつもいつ死んでもおかしくないような姿だった。もうあんな生活は過ごしたくないと彼も思ったのだろう。


なんて考えているうちにもう彼の家の前まで来てしまった。僕は小売店の家に生まれた身であり、この家に食料を届けるという日課がある。いつものように彼の母親に野菜や果物を渡したところで少し聞いてみようか。


「容体はどうですか?」

「あんまり良くないみたいね…大丈夫かしら…?」


彼はここ数日学校を休んでいる。栄養不足がたたって病気にかかってしまったのだ。


「あ、あと…」

「どうしたのかしら?」

「鎌のついた笛を持った男の人見ませんでした?」

「見てないわね。それがどうかしたの?」

「あ、それならいいんです、ありがとうございました。」

「いえいえこちらこそいつも食べ物をありがとうね。」


あの死神は僕をつけた後ここにはきてないのか?そもそもつけていない…もしくは死神の姿が見える人は限られているのか?


そんなことを考えながら僕は家に着いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る