裏表少年と笛吹き死神
あんかけ(あとち)
裏表少年と笛吹き死神 第1話 (あんかけ 作)
『ソレ』は、突然現れました。
「こんばんは、少年」
「……こんばんは」
夜、暇なので自分の家の庭を歩いていた僕は驚きました。
派手な服。
何か筒みたいなものを持ってる。
「あなたは誰ですか?」
「ああ、僕は……ただの笛吹き男ですよ♪そんなことより少年、この写真に写ってるヒトを見ませんでしたか?」
「え?」
ただの笛吹き男?
しかも、何故聞き込みなのでしょうか?
「……この写真のヒトの行方は知ってますが、どうしてこんなことを訊くんですか?」
「理由なんてどうでもいいじゃないですか」
「……理由は大切なことですよ?理由を教えてくれなきゃ答えません!」
「じゃあ僕も、このヒトの行方を教えてくれなきゃ理由を教えません!」
……面倒なことになりました。
それに、この写真のヒトは友達。
知らないヒトに友達の住んでる所なんて教えませんよ!
お母さんが何度も注意してました!
「……あー、分かりました。理由を教えてあげますよ。ま、これを見れば分かるでしょう。」
良かった。
ほっとしたところに笛吹き男さんが見せてきたのは、僕がさっき見てた筒みたいなもの……。
「これは……もしかして笛?」
「そうです、笛です。でも、半分正解半分不正解。」
「……あっ、口をつける場所の反対に鎌の刃みたいなものがあります!」
「そこです!よく気付きました♪」
思わずゴクリ、とつばを飲む僕。
その様子を見た笛吹き男さんはすかさず説明を入れてくれました。
「もうこの際全部吐いちゃいますが、僕はね。死神なんですよ。だから、『もう死ぬ人間』のお迎えに来てあげるんです。優しいでしょう?あっ、少年は"ハーメルンの笛吹き男"って話をご存知ですか?」
「知らない……。」
「笛を吹いて街の人間を操る笛吹き男がいた、って話なんですけれども。僕はあの後亡くなって『死神』という職を与えられたハーメルンの笛吹き男です。笛吹き死神、とでも呼んで下さいね♪……ここまで話せば充分ですか?」
「……いいですよ」
その言葉を聞いた笛吹き男……いえ、笛吹き死神さんは満面の笑みを浮かべました。
「ふふ、いきなり『僕は死神』って言われても疑わないのですか?」
「だって、鎌持ってるじゃないですか!死神は本当にいたんですね!」
「はいはい、いますよ♪ここに♪純粋な良い子ですね♪」
何だか調子の良くなってきた笛吹き死神さん。
「だから……その……この写真の子は、もうすぐ死ぬんです。なのでお迎えに行ってあげなくては、と♪」
「なるほど……。」
でも……僕は、あることを思いつきました。
「……でも、この子は僕と大親友で……。だから僕、最期にこの子に会いに行きたいな」
「……。」
「お願いです」
「……いいでしょう。ただし、用が済んだら言って下さい♪」
もちろんですよ。
……まあ、その時は来ないでしょうけど。
「……それまで少年につきまといますよ」
そう言い捨てて、笛吹き死神さんは闇に消えていきました。
……ホラ吹き死神さん。
ハーメルンの笛吹き男のこと、本当は僕知ってますよ。
悪い人間達にお仕置きする話。
だから、あの死神さんもきっと。
……悪い人間を狩る死神。
僕にはお見通しですよ。
あの死神さんを騙しぬいて、友達を守りたいです。
──
「……実にウソが下手でしたね。あの少年は。」
笛の鎌を担いで空を飛びながら、僕は呟きました。
あの少年は、僕の本性を知っている。
僕は、昔も悪い人間にお仕置きをしていましたが……
現代でも悪い人間にお仕置きしています。
僕が"ハーメルンの笛吹き男"っていうのは事実ですけどね。
本当は、悪い人間に罰を下すという死神なんです。
……裏表の激しい少年。
僕にはお見通しですよ。
悪い子だから、素晴らしい笛の音を聴かせてあげたいですね。
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