第11話 パーマ対空手家、そして悪夢。
お互いの頬に目掛けて同時に放った右ストレートは二人が同時に体を後ろに反らし、当たる寸前に避け、吹雪はバックステップで竹島から離れ間合いを取る。
竹島にダメージは無く、吹雪が間合いを取った事を確認し、腰を深く落とし正拳突きの構えをする。
「いきなり、正拳突きの構えかよ。ラストスパートに使わねぇのか?」
余裕もあり、右手を数回スナップさせながら吹雪は竹島に軽い挑発をする。その吹雪の言動に竹島は可笑しかったのか鼻で笑い言葉を返す。
「技が正拳突きだけとは限らんぞ。お主のその油断が命取りになるだろう、さあ、かかってこい!」
「なるほどね、だったら遠慮なく!」
吹雪は助走を付けない走りで竹島に近づき、竹島は自分の右拳が届く間合いまで接近した吹雪に、正拳突きを放ったが、吹雪は拳が当たる寸前に体を後ろに反らし、右足を前に出しスライディングをする。
竹島は吹雪の行動に驚愕し、避ける隙間もなく吹雪に右足を刈られ前に倒れる。
吹雪はチャンスだと感じ、スライディングをし終わったすぐに立ち上がり、倒れている竹島の背後に馬乗りになり、腕を首に巻き締め上げる。
竹島は今のダメージに苦悶の表情を浮かばせ、唇を開き歯を食い縛りながら、吹雪のえげつない拘束から抜け出そうとしていた。
「降参するなら今のうちだ。」
「だ、誰…が…こ、降…参…する…訳…ない!」
酸素が体に行き渡らず途切れ途切れに話す。顔の全体が真っ赤になった竹島は、背中まで密着している吹雪の髪の毛を引っ張るが、吹雪はそれでも必死にしがみつき離さない。
だが吹雪が離さないからと言って諦める竹島ではなかった。竹島は頭を上下に振り、体を揺らす。
竹島が暴れるために吹雪は振り回され、遂には上下に振っていた頭が鼻に激突し、吹雪はその激痛に耐えきれず首から手を離してしまい、苦悶の表情で両手で鼻を覆う。
首の拘束から解放された竹島は、四つん這いになりがらも大きく息を吸い込み、何度も深呼吸を繰り返す。
(アイツ、あんな危険な事をして! お陰で三途の川が少し見えたぞ! だが、これでアイツも同じ手は伝わらんと分かっただろ、次は容赦せず『覇気』を使いに行く!)
竹島は吹雪の行動に恐れはしなかったが、内心は驚愕で染まっていた。
(やっぱ、あっちの方が体がデカイ分、こっちが不利だぜ。けどよ、前に反撃できなかった事が今はできんだ。この調子でアイツをぶっ倒す!)
多少のダメージを食らったにも関わらず、吹雪の内心は余裕で竹島をどう倒すか考えていた。
「なあ? 質問なんだけどよ?」
「む?」
吹雪は自分の気持ちとは裏腹に、竹島に質問を持ちかける。竹島は吹雪の言動に怪訝そうな表情を浮かべて質問を受ける。
「お前の程の強い奴が、何故『カンザキシノブ』に付き従うんだ? お前は仲村みたいに力で付いて来てる訳でもなさそうだしよ?」
吹雪の質問は単純かつ素直な疑問だった。
竹島はフッと少し笑い、戦闘モードから一転して穏やかになる。
「良いだろう教えてやる。私が何故、シノブ様に付いて行くのは…私と彼は古い付き合いで、私は彼に力の使い方と命の恩があるからだ。」
「命の恩? 助けてくれたぐらいで、そんな易々と正体不明な奴に付き従ったのか?」
「お主には分からんよ。私がどれだけシノブ様を尊敬しているのか…」
「…俺は分かりたくないな。人の友人に酷い怪我までさせて謝りもせず、こそこそと隠れて『覇気使いバトル』なんて下らねぇ事まで始めた精神異常者なんて俺は理解したくねぇよ。」
吹雪は竹島を睨み、吹雪が今まで『カンザキシノブ』にやられてきた事に許せい気持ちで、竹島に八つ当たりの反論をする。
「そうかもな…あの方は変わってしまった。」
竹島の明るかった表情が、嘘みたいに暗く俯き、拳を強く握り締める。
「変わった? 人間、成長したら心も変わるだろ?」
竹島の変わったという言葉に、違和感を感じた吹雪は怪訝そうな表情で聞き返す。
「…確かに人間は、成長すれば心や考え方等、変わるだろうが、その変わるとは違うベクトルだった。あれは何かを怨み憎んでいたのだ。物凄い憎悪だった、全てを飲み込み破壊する正に一寸の光が見えない真っ暗な…闇の復讐心。」
先週見た時とは違い、竹島の様子は少しおかしかった。それは歓喜の紹介が嘘のように脅え体も震えて恐れていたのだ。
(竹島が脅えてる? あんなに忠誠を誓ってた奴が、何故こんなにも脅えているんだ? この一週間に何があったんだ!?)
「…だが、私はお前との戦いを無下にできん、それが男との約束だからだ。」
気を取り直し、竹島は空手の構えを取り、吹雪と対峙する。
「…お前等の事情は知らねぇけど、俺も引けねぇんだ。俺を信じて付いて来てくれたアイツに、まだ謝ってねぇからよ。」
吹雪の体から冷気が滝のように溢れ出て、自分の周りに小さい氷を撒き散らしダイヤモンドダスト現象を作りだした。
「ダイヤモンドダストか、綺麗だがそれで俺をどう倒すつもりだ?」
「ただのダイヤモンドダストと思うなよ。」
普通に綺麗なダイヤモンドダストを褒め称えた竹島だったが、ニヤッと笑った吹雪は右腕を後ろに回し、数秒かからずに右腕に冷気が溜まり、勢いよく自分の目の前に手をかざす様に突きだす。
「!」
吹雪が突きだした手のひらから、激しい冷気が吹き荒れ竹島を襲う、竹島は冷気を帯びても平気だったが、その考えは一変させられた。
それは体に無数の氷の粒が付着しており、その氷が侵食するように大きく広がった。竹島は振り払おうとするが、お構い無しに氷はだんだんと体を凍結しようとする。
「『氷の覇気、マジックアイス』って技名というところだな。その氷は振り払っても残った氷が再生して、お前を凍結させるまで活動する。」
能力の説明を終え勝った気になっている吹雪を嘲笑うかのように、竹島もにやけた顔になる。
「これは実に厄介だな、だが甘いぞ! 私が、対策していないとでも思ったのか!」
竹島の言葉通りに、何故か氷の侵食は停止し、逆に全てが氷が溶けていた。
それを見た吹雪は困惑に陥った。にやけた顔は一瞬にして鬼気迫る表情になった。
(一体どうやって氷を溶かしたんだ!?)
「色んな空手の技をしたかったが、お主が強くなりすぎたせいで、私も『覇気』を使わなければなくなった。」
言い終わると竹島の体からボロボロと茶色い岩の欠片が落ちてきた。それは徐々に体を覆い、形を成していく。
それはおとぎ話やゲームに出てきそうな、木より大きく雄大で巨体な岩の人形をしたゴーレムだった。
「おいおい、冗談はよしてくれよ。まさかゲームに出てくるヤツと戦えるなんてよ、ちょっと嬉しくてハッピーなんだけどよ、この気持ち分かる?」
吹雪はひきつった顔で、言葉とは裏腹な態度を取っていた。
「『岩の覇気、ゴーレム化。』そうかハッピーか、ならこれはどうだ!」
竹島はスピーカーでも持っているのか、野太く山が揺れそうな大きい声で喋り、右腕を大きく後ろに回し、大きい為か遅く鈍いパンチで吹雪に攻撃する。
吹雪は竹島のパンチに当たらないように走りながら大きく避けた。
そして竹島の岩のパンチが地面に当たり、大きなクレーターを作った同時に衝撃の余波が、周りに影響を及ぼし風圧で木々は激しく揺れ、それに巻き込まれた吹雪は両腕で風圧をガードしたが耐えきれずに、森の奥まで、くの字に吹き飛ばされる。
風圧で吹き飛ばされた吹雪は、自分がフェンスとして作った氷の壁に背中から激突した。ふらつきながらも立ち上がり、幸い戦闘は続行できる様子だ。
「ゴーレムってあんなに強かったか? ゲームだと魔法とか物理攻撃でゴリ押しすんのによ。現実のは強すぎんだろうがったくよ、弱点とかねぇのか! 背後になんかヒント的な光ってる部分があると、そこばっか狙うのによ!」
吹雪は怒った顔で愚痴を漏らす。何を言っても残念な事だが現実は非情で、そんなゲームみたいに甘い事など起きない、現実は自分の力で攻略しなければならない、そんな過酷な状態だった。
「仲村の奴も凄かったけどよ、竹島の奴は凄いを通り越してヤベェな。あんなパンチを直撃で喰らうと口から内臓が飛び出そうだっていうか、なんで独り言を喋ってんだ? まあいいか、“ゴリ押し”か“戦略”のどっちかだ。決まってんだろ、俺は…“戦略のゴリ押し”だ。」
竹島は、さっきのパンチ攻撃で吹雪を見失い、ゴーレム化した時に、一個の動作するのにも遅いので眼だけを使い探していた。
森からガサゴソと物音が聞こえ、聴力のいい竹島はその森の部分に大きく振りかぶって右ストレートのパンチをした。森の木々は無残にも倒され、ある意味、自然破壊だが吹雪はいなかった。
「こっちだぜ、竹島!」
岩の腕から声が聞こえ、竹島は左腕を上げると二の腕あたりに吹雪が、コアラみたいに発汗させながら必死にしがみついていた。
「お主、いつの間に!」
「さっきの物音は気づかれない様に放った氷だ。それなら案の定、テメェは攻撃してくれた。お陰で近づけたぜ!」
竹島は左二の腕にいる吹雪を振り払ったり、掃けようとしたが、吹雪の動きが夏に出てくる黒い生物の動きで、丁度見た目も黒かった…。
「ええい! ゴキブリみたいな動きを!」
「テメェ今なんつった! ゴキブリって言ったか!? 今の言葉訂正しやがれ! 俺は人間だ! そして謝れ! 俺みたいな見た目の人に全員に謝れ!」
吹雪は竹島のゴキブリ発言に、涙目になりながら怒りを顕にし早口でツッコミをする。
「うるさい! このゴキブリ!」
「また言いやがったな!」
買い言葉に売り言葉の言い争いが続く中で、再び吹雪がニヤリと笑い竹島に伝える。
「ゴーレム倒したら経験値ってどれぐらい入るんだ?」
意味不明な発言をした吹雪の言動に、狙いが分からない竹島は、困惑せずしがみついている吹雪に攻撃を仕掛けようとしたが、ゴーレムの右手は吹雪に当たる寸前に止まった。
「な、何故!」
ゴーレムの攻撃が寸前に止まった事に困惑する竹島だった。吹雪はピューと口笛を吹き、竹島にこっちを向かせるために答えを教える。
「ゴーレムっていうのは頑丈で強いが、岩の繋ぎ目っていうのは頑丈じゃないんだよ。このゴツゴツした岩の塊はあくまで鎧、繋ぎ目を断裁すれば!」
ゴーレムの節々から大きな氷の破片が飛び出て、手、腕、足、首に氷が突き出てゴーレムの体のパーツをバラバラにした。
岩のパーツは地面に落ちると土煙を舞い上げ、竹島の姿が見えない状態だった。
吹雪はゴーレムがバラバラになる前に、ゴーレムの腕から手を離し、素早い時間で氷の滑り台を形成し、ゴーレムから落ちてくる岩のパーツに当たる前に避難していた。
「まあ、本体を倒さねぇと終わりじゃねぇからな。竹島よ、ここまでやっても降参しねぇか?」
土煙が晴れ、岩のパーツが周りに飛び散っている中心に無傷の竹島が仁王立ちしていた。吹雪の予想では怒りに狂って攻撃するかと予想していたが、そう甘くなく竹島は何もなかったように無表情であった。
「正直、侮っていた。お主が、ここまで戦える男とは思わなかったからだ。先週の失態より成長し、私と互角に渡り合う所まで来ていたからな。」
そして何事なかったように再び、竹島は面と向かって吹雪を絶賛していた。
「ちょっと、その話しするのは早すぎるんじゃねぇのか? あのゴーレム化が本気だと思ってねぇし、それに最後の勝負は『覇気』じゃなく『拳』で決めようぜ?」
未だにニヤついた顔で、吹雪は最終決着の仕方を殴り合いという形で竹島に提案した。
竹島は暫く考えた後に、何を感じ何を思ったのかは分からないが、竹島も自然に頬を緩ませて…
お互いが、同時に走り込み右ストレートが両方の頬に猛烈な痛みを与えた。二人は口が切れ血を吹き出し、吹き出した血は地面に撒き散らすように流れる。
二人は素人の見えない素早いノーガードのインファイトを繰り広げる。
二人の顔は親の敵でも取るような、真剣な表情と睨みで、お互いに勝利を譲らないぐらいの熱気と闘志だった。さっきまでの戦いの疲れが嘘の様にキレのある動きで、お互いが適当に殴り続けてできたのか、顔に打撲、体に擦り傷、雄叫びを上げて所々に怪我をしていく。
(私は負けられない! あの時の恩を返し、忍様に礼を言うまでは!)
数年前の夕焼けの公園にて
「お前、有名な道場の息子だからって調子に乗んなよな!」
「生意気なんだよ! 分かってんだぜ、喧嘩で空手が使えないってな!」
二人の生意気な少年が横たわっている一人の胴着の少年に蹴る殴る等の暴行をしていた。胴着の少年は目を瞑り、抵抗せず、ただ暴力を受けていた。
そこに二人の少年の背後から、両足でドロップキックを華麗に背中にお見舞いした黒い少年が現れた。
「俺は空手も何も教わってないから…別に、俺と遊んでくれてもいいだろ?」
ゆっくりと立ち上がった黒い少年を見た時に、二人の生意気な少年たちは顔が真っ青になり、脱兎の如く逃げ出した。
「…つまんねぇな。」
黒い少年は軽く舌打ちをして、傷だらけで横たわって涙が出ている胴着の無表情で少年を見る。
「…弱いな。何故、反撃しない?」
「だって…だって…」
胴着の少年は体を丸くさせ、泣きながら黒い少年の問いに声が震えながらも答える。
「だってもクソもねぇんだけどよ? ここまでされて悔しくないのか?」
「悔しいよ…アイツ等、二人がかりで…」
胴着の少年は顔だけを上げて、怒った様子で反論する。
「悔しいなら、二人が恐れるぐらいに強くなれ、それなら二度と手出しされない。そこで立ち止まったら、最後まで辿り着けないぞ?」
黒い少年は胴着の少年を背に、その言葉だけを残し、公園の出口まで歩き立ち止まり…
「強くなりたければ神崎の所まで来い。」
それだけを言い残し、夕暮れの太陽の方向に向かって歩き去った。
「強くなりたければ…神崎の所まで…来い…。」
(それから私は忍様の所に通い強くなり、あの人を守るために三銃士になったのだ! こんなチャラチャラした奴に負ける訳にはいかないのだ!)
二人の体と顔はボロボロだった。吹雪は右瞼が腫れ肉が垂れ、左鼻から口元を遮るように鼻血に、右唇が切れて出血していた。
竹島も顔の所々にくっきりと現れる青アザ、そして切り傷、額から地面にポタポタと広がるように出血していた。
竹島の渾身の右ストレートが、吹雪の左頬に綺麗に命中して、吹雪の意識が揺らぎ足元がグラグラとふらついた。
「勝った!」
思わずに本音が口に出た竹島、その勝利宣言を嘲笑うかの様に吹雪が怪しく笑い…
「あぁ、勝ったのは…こっちだ!」
吹雪は力を振り絞り、ふらつく足を一歩前に出し、雄叫びを上げて、吹雪が修二に喰らった綺麗な右アッパーより、更に綺麗な右アッパーで竹島の顎を当て、そのアッパーの衝撃で竹島は白目を向き、飛び上がった体は数秒という時間と共に背中から落ち、竹島は気絶した。
「はぁはぁはぁ、俺の勝ちで良いよな?」
吹雪は腰が抜けて、地面にへたりこみ安堵の表情で一息つき、氷のフェンスが能力の継続時間が過ぎたのか、雪のように氷が溶けて一粒ずつゆっくりと落ちてきた。
「あーもう限界。ヘイムーンの奴、何が“今の君なら簡単に勝てるだ”だ! ふざけやがって、体がボロボロじゃねぇか!」
気絶した竹島とボロボロの吹雪の二人しかいない山の頂上で、吹雪はヘイムーンに対しての愚痴を大声を張り上げる。山頂なので吹雪の木霊が周りに響いていた。
「…何してんだろ俺、さっさと家に帰って久し振りの風呂に入って寝るか。それよりコイツが起きるまで待ってやるか…へっくしょん!」
さっきまで罵詈雑言ばかり言っていたのに、急に我に返り、くしゃみをして両手を枕にして地面に寝そべった。
神崎邸の神崎洋の書斎室にて、一つの灯りがあり、その灯りは奇怪な動きをしていた。周りの本棚を照らしたり、何かを記入したりする机等を照らしていた。
「輝さんの言う通りなら、ここに情報がある筈なんだけどな?」
それはゴスロリメイド服を着用して、ツインテールのウィッグに、女メイクをして、懐中電灯を持って内部を探索している内藤だった。
「これバレたら、どうなんの? 女装は罪になんのかな? お、あった。」
色々と照らし、情報を閉まっていそうな、それらしきダイヤル式の黒い金庫があり、喜びながら内藤は何処からか聴診器を取り出し、黒い金庫に聴診器を当てダイヤルを回す。
「それらしい物を置いておけば簡単に捕まるんだな、ネズミっていうのは?」
背後から問いかける様に話してくる人物に内藤は背筋がゾッとした。それは誰かに見つかった事で恐怖をした訳ではない。その見つかった人物が良くなくて恐怖したのだ。
それは暗い部屋でサングラスを身につけ、腕組みをして余裕な表情で内藤を見下す・・・神崎忍だったからだ。
「あら私ったら、ご主人様の部屋を間違えて入っちゃったわ。私ったらドジっ子メイドですね。ごめんなさいね、忍様。」
内藤は冷たい汗を発汗させながら裏声で、なんとか誤魔化そうとして聴診器を隠し、金庫から離れて背後にいる忍から離れようとするが、忍にガッチリと肩を捕まれる。
「安心しろ、ここで暴れても構わない。ここは親父の書斎室じゃないからな、ここは“ネズミを駆除する部屋”だからだ。」
内藤は近くにあった本棚から、本を一冊だけを本棚から引き抜き、忍に捕まれている肩を激しい動きで手で払いのけ、さっき引き抜いた本を忍に向かって投げる。
すると本は光を発し、内藤は机を倒しバリケードのような扱いをする。それに感づいた忍は逃げようとはせずに、薄く笑みを浮かべただけだった。
本は光を収縮させ爆発した。その威力は、周りの物を燃やし本棚も粉々にする爆弾だった。
「……。」
無傷の内藤はムクリと立ち上がり状況を確認をするが…
「『爆破の覇気』か、威力が高いのは接触型だな。部屋が木っ端微塵になるとは少し驚いた。」
言葉だけの驚愕した素振りなんて一切、表情に出さずに無傷の状態で、現れた所にずっと立ったままの忍がいたのだ。
「ヤバい、俺死ぬかも…」
「死ぬ? 死なせんよ、お前が何処の誰に雇われて誰に情報を流したか、ゲロするまで―――話しを聞くだけだ。」
内藤の最悪への悪夢の始まりだった。
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