第17話 謎の男の正体

「はは、そうだよね、そりゃあ気になるよね」


「あなた…誰?」


私の知らない相手が私の事を知っている事が、こんなに怖い事だとは思わなかった。


「俺、吉良京(きらきょう)っていいます」


「吉良…京?」


「うん、吉良家、聞いたことあるでしょ?」


「吉良…家」


「聞いたことある何処じゃないと思うけど?」


「吉良家って…、"あの"吉良家?」


「うん」


吉良家とは、世良家と同じで身体を売ることを家業としている家の事である。

簡単に言えば、世良家は女を、吉良家は男を売っているようなものである。


「…あなた、吉良家の人なの?」


「うん」


「…だから、私の事知ってたのか」


「うん。それに、世良家との合同定例会にも結構参加してるけどね」


合同定例会とは、世良家と吉良家で定期的に集まる場を設け、お客様の情報をやり取りする集まりの事である。


「え…てことは、あなた吉良家で上位の人ってこと?」


定例会では、各家の売上上位の者も参加する決まりになっており、情報交換をする場に参加することでさらなる売上増加を計っている。


「…まあ、そうだね。あんた本当に知らなかったのか」


「知らなかった…」


「はは、他人に興味無さ過ぎでしょ」


「…」


「俺さ、ずっとあんたに興味あったんだよね」


「…なんで」


「そりゃあ、世良家のNo1だよ?ヤりたいに決まってるじゃん?」


「…」


「しかもさ、定例会で会ってみたら無表情だし、俺らのこと?いや、世良家に関わる全てを汚いものを見るような目で見てるし」


「…」


「この顔がさ、SEXの時にはどう歪むのか気になって仕方なかったよね」


「…」


「どんな声で喘ぐのか、イク時はどんな顔すんのか、想像しただけで勃つよね」


「…」


「いいね、その引いた顔も嫌いじゃないよ」


「…」


「まあ、そういうことだから」


「…」


「さっきの話、いつが出来るか考えといてね」


「いや、だから話をーー」


「俺、今から仕事だから行くわ!またね」


「…」


彼は、潔いくらい私の話を聞かず、伝票と共に足早にこの場を去って行った。

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