第16話 謎の男④
「はは、そんな引いた顔しないでよ」
「…」
「けど、分かってたでしょ?自分でも」
「…」
「"世良家"の名前が出された時点で、相手が何を求めているか」
「…」
「あんた、”壱人”らしいじゃん。金持ち共はあんたと1度はヤりたくてしょうがないって聞くけど」
壱人とは、世良家での売上順1位の者を指す名称である。
「…」
「そう噂されてる子と、ヤりたいと思うのは男なら普通だと思うけどね」
「…」
「で、どうなの?」
何も言葉が出ない。
聞きたい事は沢山あるし、言いたい事も沢山ある。
確かに、家の名前が出た時点で、行為が目的と言うことは大体予想が付いていた。
しかし、どうしたものか。
今は一ノ瀬様と契約を交わしている為、他の人と行為をすることは禁止されている。
もしこの申し出を断れば、私の事が大学中に言いふらされるか、ネットで広まるか、どちらにしろ悪いことしか起こらないだろう。
しかし、断る以外の選択肢は無い。
「あ、のーー」
「あー!ちょっと待って!」
「…はあ」
「因みに、料金はいくら?」
「…は?」
「俺さ、坊ちゃんじゃないんだよね。まあ、お金が無い訳では無いけど」
「…はあ」
「けど、世良家の壱人だし高いよね。まあ、1番良い女とヤレるなら出すけど」
「…はあ」
「とりあえず、あんたいつならSEX出来んの?俺の予定にもよるけど」
「…いや、」
どうしようか。こんなに人の話を聞かない人にあまり会った事がない為、対処法に困る。
しかし、私も暇ではない。
今日も今日とて、今から欲求不満な一ノ瀬坊ちゃまの相手をしなくてはならないのだ。少しでも遅れると面倒臭い為、早く向かわなくてはならない。
「あ、あのーー」
「てかさ、この大学にまさかあの世良家の翡翠がいるとは思わなかったよね」
「いや、あのーー」
「しかも、想像してたのと大分違ったから驚いたよね」
「話しを聞いーー」
「もっと派手な感じで男を手玉に取ってると思ってたけど、正反対だよね」
「だからーー」
「え、まさか本当は翡翠じゃないとかないよね?」
「…」
「まあ、それはないか」
「…」
「その変装、っていうの?してない時のあんたとは何度か会った事あるし」
「え…」
「はは、やっぱあんた、俺が誰なのか分かってなかったんだね」
「どういう…」
「俺は、あんたに何度か会った事があるよ」
「え…」
「あんた、俺と会っても無関心て感じだったしね」
「何を言って…」
「いや、俺にっていうか、"世良家に関わるもの全て"に?」
「あなた…」
「仕事となるとまた別なんだろうけどな、仕事の腕は確かだって聞くし」
「あなたは…」
「はは、何か俺だけあんたの事知ってんのって、あんたからしたら怖いよね?」
「あなた誰なの…?」
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