第12話 容姿

主人の元に泊まって数日後、今日も今日とて大学で講義を受けている。


大学での私はと言うと、至って真面目。


長い髪は1つに束ねており、常に眼鏡を掛けている。


他人から見た第一印象は、地味じゃないだろうか。


受け身の講義を私だけが聞いている中、隣の夏帆は退屈そうに話し掛けて来る。


「緑〜」


「夏帆、真面目に講義聞かないとまた単位危なくなるんじゃない?」


「大丈夫、そこら辺はお金で何とかなるから」


「…」


「そんな引いた顔しないでよ〜、ここでは普通でしよ〜」


これだから金持ちの坊ちゃんお嬢ちゃんは、と思っていると、夏帆に掛けていた眼鏡を取られる。


「ちょっ、」


「やっぱり!この眼鏡度数入ってない!」


「返しーー」


「緑、わざとこんなダサい眼鏡掛けてるでしょ?素顔はこんな美人なのに!」


「何言ってーー」


「髪型だって、わざと顔が見えない様に隠してるし!勿体ないよ!」


「いい加減にーー」


『そこ!騒がしいぞ!』


教授に怒られてしまった。


夏帆は私の所為だと言わんばかりの顔をこちらに向けて来る。


「…眼鏡返して」


「無くても見えるでしょ?」


「…」


「なんで、隠してるの?」


「…」


「顔だって良いし、スタイルだって本当は良いよね?今はダサいぶかぶかな服着てるからあんまり分からないけど、それでも分かるよ!」


「…」


「普通なら皆んなに見せびらかして自慢するのを、緑は隠してる」


「…」


「寧ろ、皆んなにバレたくないようなーー」


『おい、九条!騒がしいぞ!お前は毎回ーー』


教授から説教を食らっている夏帆を横目に、この教授は怒られたら厄介な為気の毒だなーーと思っている一方で、話を遮ってくれた教授に感謝した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る