第11話 質問責め①

私に残された選択肢は、主人が待っている布団に入る事のみ。


今回も圧に負けてしまったーーと思いながら渋々布団に入ると、腕を掴まれ主人の体にすっぽりと収まる形になった。


前から抱き締められるこの体勢は苦手である。


逃げ場が無いため。


主人の真っ直ぐな視線が苦手である。


私の全てが見透かされそうで。


「緑ちゃん」


機嫌は良くなっているようだ。


「今日、話してた男誰?」


「…は?」


突然の意味不明な質問に、口は半開き、眉間には皺が寄ってしまう。


「はは、緑ちゃん、その言葉遣いはダメ。可愛い顔が台無しだよ」


「何がーー」


「今日、男の人と話してたでしょ?」


「いつーー」


「205号室から講義棟に戻るとき」


「…」


「覚えてない?」


「ーーあ!」


「思い出した?」


「うん」


「うん。で、その男の人誰?」


「…」


「言えないの?」


「い、言えないっていうか、」


「うん」


「知らない」


「うん?」


「し、知らない人」


「知らない男の人と話してたの?」


「は、話してたと言うより、間違えられた」


「うん?」


「人違いされた、」


「間違えて話しかけられたってこと?」


「…そうだと思う」


「そっか、何かされなかった?」


「特になにも…」


その後、主人は何か考えこんでいる様子であった。


というか、あの場面見てたのか。


何をそんなに考えこんでいるのかは分からなかったが、私はいつのまにか主人の腕の中で眠りについていた。

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