第4話 謎の男①

205号室から夏帆が待っている講義棟に向かっていると、


「ゔっ」


誰かとぶつかってしまった。

疲れからかぼうっとしていた。


この棟は人があまり通らないため油断していた。


「すいません、余所見しててーー」


顔を上げると、そこには如何(いか)にも女の子にモテそうな、でもどこか軽そうな男の人がいた。


ツヤのある黒髪が印象的で、好青年の様な顔は整っており、身長もそこそこ高いため、さぞ女の子からモテるであろう。


でも、やはりどこか軽そうな彼。


私の顔を見たまま突っ立ている彼ーー


「…あの?」


「あぁ、ごめんね!」


「…はぁ」


気の抜けた声しか出ない私。


「それじゃあーー」


「ねぇ、」


もう行こう、と一歩踏み出した直後、腕を掴まれ硬直する。


「…はい?」


「あんたーーどっかで…」


「…あの?」


「いや、何でもない!またね」


「…はあ」


直ぐに掴んでいた腕を離されたが、何故か暫くはその感触が残ったままだった。





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