第2話 赤の他人

「ねぇ、私今日理央さん見ちゃった!」


「え〜!なにそれ!いいな〜!」


「私も見た!今日も一段と格好が良くてーー」


ここは、富豪の坊ちゃんやお嬢様方が通う有名な某大学である。


世良家の私達も通っておりーーもちろん主人の“欲”をどこででも満たす為である。


大体の学生はここを卒業後、親の会社を継ぐか起業するかだが、私は違う。


私は世良家を出て、一般企業に就職したいと考えている。“普通の”生活を送りたいのだ。


世良家の人は皆、大学卒業後の人生から自由に生きることが出来るようになる。


大体の人は、奉仕をしていた偉い人の企業に入社させてもらうか、またはそのまま世良家に残り奉仕に人生を捧げるかのどちらかである。


私は、普通の生活を送りたいに尽きる。





「ねぇ、あれ理央さんじゃない??」


「本当だわ!理央さんよ!」


「こっちに来るわ!」


主人は大学でも有名人で、一ノ瀬の息子ということはもちろん、顔も成績も良い為だろう。


主人が向こうから歩いて来る。


がーーー、


私が何か言葉を交わすことはなく、ましてや主人から言葉を掛けて来ることなんてない。


お互い目を合わせず、完全にーー赤の他人である。


私を通り過ぎて行った主人には、いつも通り沢山の女の子が群がっていた。

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