Q.14知らない間に更新止まっちゃってたね

 色のない風が意思なく飛び交っていた。


 それでも空は青く染められている。


「ねえ、知らない間に更新止まっちゃってたね」

「俺が知るかよ」

「意地悪」


 少年の瞼の裏にはいつになく不機嫌な表情が浮かんでいた。


「そもそもに毎日更新なんて無理があるんだよ」

「でも、毎日歯を磨くし、顔を洗うし、お風呂に入るし、髪を溶くじゃない」

「それこそ、俺が知るかよ」


 透明な風は少女の頬を冷たくしていく。


「でもな、人間ってのは毎日してることが周りに影響を及ぼしてるんだ。どんな些細なことでもな」

「…そうなんだ」

「お前だってどうだっていいことを毎日悩んでるだろ?」

「でも、別に何かに影響を及ぼしてなんてないよ?」

「そうでもないさ。多分な」


 少年は大きくため息をついた。

 少女の耳元までため息は響き渡る。


「今日はするのか?」

「今日しない」


 少女が去っていく足音は風が全て消し去っていた。


「少なくとも、お前はそれで変わっているだろう」


 ピタリと風は止んでしまう。


「俺もまた…変わってしまっているのかな。変えられているのかもしれない」


 少年の言葉は空の青に滲んで溶けていく。

 風がうるさい、と少年は口のなかだけで呟いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る