Q.7どうしてわたしには才能がないのかな
屋上は少年少女が生活を営む上でもっとも空の青に近づく場所だった。
そんな屋上の空の青の下に、二人の少年少女が仰向けに寝転がり、青い空を見上げていた。
「ねえ、どうしてわたしには才能がないのかな」
少女はぽつりと呟いた。
「知るかよ…そんなもん」
「そうなんだ…」
少女の様子がおかしいのが少年には分かっていたので少年は恐る恐る答えたのだった。
少年は少女からの答えがいつものものではないので、喉から腕が飛び出してしまいそうな、謎の衝動に駆られる。
「うあぁあぁあぁあぁっ!!才能なんてどうだって良いだろうがっ!!」
少年の叫びに目を丸くしたのは少女の方だった。
「才能なんてあろうがなかろうが、お前はお前だろうが!才能なんて、世界に対する適応性みたいなもんなんだよ!もしもお前の得意なことの方が優位に立てる世界があったとしても、お前は満足しないだろ?才能がないから努力する。努力してきたから、努力しないなんて考えられないだろうが。お前はそういう奴じゃねえのかよ」
「…わたしが知るわけないよ」
「ぐぅ」
少女の顔には空の青に溶けてしまいそうな笑みが浮かんでいた。
「今までで一番何を言いたいのかわからなかったけど、なにが言いたかったのかはわかったよ。才能も取り柄もなにもないわたしだけど、才能も取り柄もなにもないからわたしなんでしょ?」
「…ふぅん…そうなんだ…」
少女は立ち上がり去ろうとする。
少年が少女に言葉をかけるより先に少女が少年に言った。
「今日もしない」
少女は去り際に、少年には聞こえない声で「ありがとう」と呟いた。
少年は空の青に一人取り残された。
空の青には鳶が1羽、旋回している。
「ありがとう…か。ふられちまったったな、こりゃ」
少年は手で目を覆い、空の青を自ら遮る。
「でも、例え転生しようがどうしようが、しいつがそいつであることはやめられないんだよ。それは呪いそっくりだが…でも、その呪いを前向きに考えられるものなんだな」
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