Q2.どうしてボールって丸いのかな
永遠の青が二人の瞳を染めていた。
封鎖されているはずの屋上には二人の少年少女が仰向けに寝転がっていた。
「ねえ、どうしてボールって丸いのかな」
「は?」
「どうしてボールは丸くって、コロコロと転がっていくのかな」
「俺が知るか」
「意地悪」
少年には見ずとも少女が頬を膨らませているのが分かった。
「転がっていくために丸くなったんだろ」
「そうなんだ…」
少女の吐く息は空の青に溶けていく。
「わたしも」
一息置いて少女は言葉を紡いだ。
「わたしも、転がっていくために丸くならないといけないのかな」
少年の一際大きなため息が響く。
「お前のことなんか知るかよ。ただ、俺は早く転がっていこうとして、みんなと一緒に転がろうとして丸いボールしかなくなった世界で生きていこうなんて思わない。頑張って転がっていこうとして、それでも上手く転がれなくて、歪で、角がとれなくて。そんなのがあった方が気が楽だよ」
「下には下がいるから?」
「当たり前だろ」
少年と少女の声は穏やかなものとなっていた。
「今日はするのか?」
「ううん。今日もしない」
少女は立ち上がり、去っていく。
屋上には少年がただ一人残された。
「人間は誰しも自分が完全な丸だと思っている。何の欠点もなく、周りと寸分違わない存在だってな。でも、この世に完全な球なんてありはしないんだ」
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