少年少女と100の問答

竹内緋色

Q1.お金で買えないものってあるのかな

 降り注ぐ青の下。


 少年少女は地面に背をつけ、空の青を見つめていた。


「ねえ、あなたはどう思う?」

「あん?」


 少女の言葉に少年は興味がなさそうに返事をする。


「お金で買えないものってあるのかなーって」

「んなもんねえよ」


 少年は即答した。


「今や友情や人気や家族さえもお金で買える。そんな世界にお金で買えないものはない」

「…そうなんだ…」


 少女はため息混じりに答えた。


「でももしあるとしたら――」


 少年は言葉を止めてしまう。


 少女が自分を見つめていることに気がついたからである。


「『今』だろうな。『過去』や『未来』さえ買えるけれど、誰も、欠けがえのない『今』は買うことができない」

「それってさ」


 少女の声は楽しそうだった。


「あなたはわたしとの時間がプライスレスってこと?」

「誰がお前なんかと」


 少女は少年が照れもしないので少し不満であった。


「今日はするのか?」

「ううん。今日しない」


 そして少女は立ち上がり、去っていく。


 屋上には一人少年だけが取り残された。


「金額で考えれば考えるほど、価値のないものの価値に気づかなくなっていく」


 その言葉は霞となり空の青へ消えていく。


「価値のないものの価値は失ってからでないと気がつかない」

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