霊獣喰い⑤
「チッ」
ロストは即座に後退して雷撃を躱す。寸での所で、クラウスはロストから解放される。
「しっかりしろよ爺さん! こんな所でくたばる気か!」
バリリ、と雷を纏った槍を携えたレインが、クラウスの前に立って言う。
「き、きみは……」
「クラウスさん!」
遅れて背後からやってきたアイカがクラウスを抱き上げる。
そんな二人を守る様に、ハヤトがレインの傍に並び立つ。
「君達が、なぜここに……」
「アイカ。クラウスさんの容態は?」
「酷く衰弱してるわ。一人で立つのは無理ね」
「レインが担ぐから直ぐに撤退出来る様に準備しておいてくれ」
「分かったわ」
「本人の了解を取ってから話は進めてほしいんですけどねぇ」
「時間がない、速攻で決めるぞレイン」
「あぁもうはいはい!」
上に下にとジグザグに移動しながら接近するレインに、ロストは緑の亀を盾の様に侍らせる。
高速で突き出されるレインの雷槍を、緑の亀はしっかりと甲羅の中心で受け止める。
すぅ、と役目を終えた緑の亀が消え、すぐさまその背後から茶色の猪がお返しとばかりにレインに鋭い双牙を突き出す。
「うおっと!」
上体を反らしながら後ろに跳び上がるレインと入れ変わる様に、ハヤトが前に出る。
隙だらけの茶色の猪を右の剣で斬り捨て、返す刃でロストに振り下ろす。
「ハッ!」
ロストは身を引きながら再び緑の亀を出して凌ぐ。今度は手に持っていた鞭でハヤトを叩く。
ヒュヒュ、と風を切る鞭の先端がハヤトの左の剣に巻き付く。
ハヤトとロスト、互いに獣武を引き合いながら睨み合う。
「今回はお仲間がいるのねぇ。お友達と言うには歳の差ありすぎない?」
「『互いが納得しているのなら、全ては些末事』ってな。戦友に上も下も無いだろ」
そう言ってハヤトは左手の剣を手放す。飛来する片手剣を鞭で明後日の方向へ放り投げるロストへ向かって、ハヤトは右手の剣を構えて一気に踏み込む。
「思いきりがいいわね、ぞくぞくしちゃう!」
ロストの足元から茶色の猪が飛び出してくる。
「くっ」
止む無くハヤトは右手の剣で猪を迎え撃つ。
その隙にロストの鞭がハヤト目掛けて振るわれる。咄嗟にハヤトは空いている左手を広げる。少し離れた場所で転がっている
引き寄せた左手の剣でロストの鞭を斬り払い、ハヤトはそのまま大きく後ろへ下がる。
「早いな、あの猪。おまけに縦横無尽に突進してくるときた」
「
再びレインと二人で並び立ち、ハヤトは獣武を構え直す。
ロストは茶色の猪を消滅させ、鞭を円を描く様に振り回し術式を展開する。無数の獣弾が放たれると同時に、ロストは白鳥の霊獣を出現させる。
まるで空気に溶ける様に白鳥が消えると、先ほど放たれた獣弾も同じ様に姿を消してしまう。
「消えた⁉」
「まずい!」
これは先ほどツモスキー達を貫いた攻撃と同じだ。慌てて身構えるハヤトとレイン。
そんな二人の眼前に、
「プ、
獣力の壁が形成される。とほぼ同時に、
ドドドドォ‼ と消えた獣弾が次々に爆発し、ハヤト達の目の前を爆炎で染め上げる。
「二人共大丈夫⁉」
衰弱したクラウスを片手に、アイカは杖を掲げて言う。杖を掲げる手は小刻みに震え、表情は常に強張っているが、それでもアイカは必死に術式を展開してハヤト達を助けた。
そんなアイカに、ハヤトは笑みを浮かべる。
しかし、それが仇となった。
ハヤト達を守ったアイカの姿を、捕食者が捉えてしまう。
「……あらぁ? そこにいる女ってフィリア共和国の幻獣使いじゃない?」
ロストの目の色が変わる。明らかに危険な欲望を抱えた様な、嫌な笑みへと。
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