第7話 俺が欲しいのは勇者の剣ではなく薬草。
俺がこの世界に来てから大体1ヶ月程が過ぎた。
日本にいた頃とは何もかもが違う。
…唯一変わらないのは1番変わって欲しかった、この見た目と性格だけ。
(……そもそも、転生と転送の違いってなんだ?)
「なぁ、ツムギ、転生と転送について教えてくれ」
「…そんなのどうでもいいことじゃないです
か?」
冷たい。冷たすぎるぞこの女神。
なんでこいつこんなにトゲトゲしてるの?ハリネズミなの?
「……頼む。気になって今日の薬草収集が
ツムギは大きなため息をついて呆れている。
「…仕方ないですね、帰ってきてから説明しますから早く集めて来てください」
教えてくれるなら最初から教えてくれたらいいのに…。
よっこらせっと。
大きい籠を背中に背負い、森の中へ向かう。
「蓮、間違えても雑草は採ってこないでくださいね。兄弟かもしれないですが。」
「おいおい、雑草は精一杯がんばって生きてるんだぜ?がんばってない俺と比べたら雑草が可哀想だろ」
…渾身の自虐ネタが決まった…。悲しいなぁ俺。
この自虐ネタには流石に冷酷な女神さんも何も言えまい。
「……………」
ガチでドン引きしちゃってるじゃん。俺を見る目が冷たい!もしかして氷魔法使ってるの!?
「…ごほん。じゃあ行ってくるから」
何事も無かったように薬草を取りに行く。
自虐ネタは今後封印すると誓いながら。
*
草木が生い茂る大きめな森。妖精とか、勇者の剣とかありそうな雰囲気がある森だ。
……ビン持ってたっけなー。
気分は勇者気分だ。
パーティーメンバー誰もいないけどな。
封印された勇者の剣ではなく、木の根元に生えている薬草を回収する。
「…ええっと、これは雑草で……これは…」
むにっ
なんだ今の感触。木ってこんなに柔らかかったか?
顔を上げるとそこには、怪我をしている1人の少女が倒れていた。
「おい…!大丈夫か…?」
薬草集めを中断し、この少女を家まで運ぶことを優先する。
致命傷ではないと思うが…。とりあえず急いでツムギに治してもらおう…。
「途中で力尽きてくれるなよ……!!」
応急処置だけ済まし、籠を背負いなおして少女を家まで運ぶ。
今日の晩御飯はなんだろうか。
この森には勇者の剣はあるのか。
息切れを紛らわす為に色んなことを考えながら走って帰った。
それは青いハリネズミくらいのスピードで。
実際のスピードは所詮人並みの運動能力の人がちょっと本気を出した程度であったが…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます